2025年9月、FIFAワールドカップ2026南米予選でエクアドルが王者アルゼンチンを撃破した試合は、サッカー界に衝撃を与えた。その中心にいたのが、クラブ・ブルッヘ所属の21歳センターバック、ホエル・オルドニェスだ。
ラウタロ・マルティネスやフリアン・アルバレスといった世界屈指の攻撃陣を相手に、彼は冷静な読みと強靭なフィジカルで立ちはだかり、クリーンシートに大きく貢献した。
この試合を現地で視察していたのが、チェルシーとアストン・ヴィラのスカウト陣である。英『TBR Football』によれば、両クラブは以前からオルドニェスを追跡しており、今回のパフォーマンスでその評価はさらに高まったようだ。
オルドニェスは2023年にクラブNXTからクラブ・ブルッヘへ加入。ベルギーリーグでの安定したパフォーマンスに加え、欧州カップ戦でも経験を積み、急速に評価を高めてきた。
契約は2029年夏まで残っているが、欧州のトップクラブが次々と関心を寄せる中、ブルッヘが長期的に彼を引き留めるのは難しいと見られている。実際、2025年夏にはマルセイユ移籍が目前まで迫ったが破談に終わり、今やプレミアリーグの2クラブが本格的に動き出すタイミングをうかがっている。
チェルシーとアストン・ヴィラが求めるもの
チェルシーにとって、オルドニェスはまさに必要不可欠な存在になり得る。レヴィ・コルウィルが負傷離脱し、ウェズレイ・フォファナも長期的にコンディションが安定しない。
オルドニェスは190cm近い体格を誇り、空中戦の強さに加えて、ビルドアップ能力にも磨きをかけてきた。ベルギーリーグでの安定感と国際舞台での経験は、チェルシーの守備陣に即座に厚みをもたらすだろう。
一方、アストン・ヴィラも守備の再構築を迫られている。タイロン・ミングスの年齢や、ディフェンスライン全体の不安定さが露呈しており、ウナイ・エメリは新たな守備の柱を探しているおり、オルドニェスはその候補として理想的なターゲットになり得る。
特に、ラインを高く保ちながらもカバーリングに優れる点は、エメリの戦術にフィットする。さらに、彼の冷静な判断力はプレミアリーグの激しいテンポにも適応できる可能性を示している。
市場価値は約3900万ポンドと報じられており、決して安価ではない。しかし、将来的なリセールバリューや代表での経験値を考えれば、投資に見合う存在だと両クラブは判断している。さらに、クリスタル・パレスやアーセナルも関心を示しているとされ、獲得競争は一層激化する見通し。
オルドニェスのプレースタイルと成長曲線
オルドニェスの最大の強みは、対人戦での圧倒的な強さとポジショニングの精度にある。相手の動きを先読みし、スペースを消す能力は21歳とは思えない成熟度を感じさせる。アルゼンチン戦では、ラウタロ・マルティネスの抜け出しを何度も封じるなど、冷静かつ的確な対応を見せた。
また、彼は守備だけでなく攻撃面でも貢献できる。後方からのロングフィードや縦パスで攻撃のスイッチを入れる能力は、現代的なセンターバックに求められる要素そのものだ。ブルッヘでは平均パス成功率88%を記録し、ビルドアップの起点としても信頼を勝ち取っている。
さらに、精神的な成長も著しい。若手ながら試合中に味方へ積極的に指示を出し、リーダーシップを発揮する姿は、将来的にキャプテンシーを担える資質を感じさせる。
チェルシーに加入すれば、コルウィルやフォファナとの競争は激しいが、逆に言えば彼らと切磋琢磨することでさらなる成長が期待できる。スタンフォード・ブリッジの舞台で、若き守備陣の一角を担う姿は容易に想像できる。
一方、アストン・ヴィラに加入すれば即戦力としての役割を担う可能性が高い。エメリの下で守備の中心となり、クラブの欧州カップ戦常連化を後押しする存在になり得る。ヴィラ・パークでの熱狂的なサポートを背に、彼が守備の象徴となる未来も十分に考えられる。
個人的な見解
ホエル・オルドニェスのプレーを見ていると、彼がただの有望株ではなく、すでに完成度の高いセンターバックであることが分かる。
対人戦の強さ、空中戦の支配力、そして冷静な判断力。これらはプレミアリーグで即座に通用する資質だ。アルゼンチン戦でのパフォーマンスは、彼が国際舞台でも臆することなく戦えることを証明した。
個人的には、チェルシーでの適応が最もスムーズだと考えている。若手DFとの競争は厳しいが、逆にそれが彼をさらに成長させるだろう。
一方で、アストン・ヴィラに加入すれば、即座に守備の中心として起用される可能性が高く、クラブの野心的なプロジェクトにおいて重要な役割を担うはずだ。
いずれにせよ、2026年のワールドカップを前に彼の去就は大きな注目を集め続ける。オルドニェスがどのクラブを選ぶにせよ、彼が欧州トップレベルの舞台で輝く未来はほぼ確実だろう。