ヨーロッパの移籍市場はすでに来年1月の動きを見据えて熱を帯び始めている。その中心にいるのが、日本代表のエース、久保建英だ。スペイン紙『Fichajes』が報じたところによれば、アーセナルはレアル・ソシエダの攻撃的MFに対し、4500万ユーロ規模のオファーを準備しているという。
契約には6000万ユーロの解除条項が設定されており、ソシエダが冬の段階で放出に踏み切るかどうかが最大の焦点となっている。
今季のソシエダは開幕から不安定な戦いを続け、リーグ戦で下位に沈んでいる。攻撃の中心を担う久保にかかる負担は大きく、彼の去就はクラブの命運を左右するテーマとなっている。24歳となった久保は、既にラ・リーガで確固たる地位を築き上げたが、キャリアの次なるステップとしてプレミアリーグ挑戦を強く意識しているとされる。
ブカヨ・サカの代役を務められる右サイドの人材は長らく課題であり、さらにチャンピオンズリーグを勝ち抜くためには攻撃の厚みが不可欠。アルテタが久保を「戦術的な多様性を広げる存在」と見ているのは明らかであり、クラブの野望と久保のキャリア志向が一致した形となっている。
とはいえ、この夏の移籍市場において、チェルシーからイングランド代表FWノニ・マドゥエケを確保しており、イーサン・ヌワネリやマックス・ダウマンら若手も控えており、彼らの成長を阻害する可能性があるため、これ以上の競争を求めるかは未知数のまま。
久保建英のプレースタイルとアーセナルでの可能性
久保のプレースタイルを一言で表すなら、創造性と冷静さを兼ね備えたアタッカー。狭い局面でもボールを失わず、相手守備を切り裂くドリブルはラ・リーガでも屈指の武器となっている。昨季は公式戦で二桁得点に迫る活躍を見せ、得点力とアシスト能力の両面でチームを支えた。特に右サイドからのカットインは、プレミアの強度でも十分に通用するだろう。
アーセナルに加入した場合、サカのバックアップとしてだけでなく、トップ下や左サイドでも起用可能な柔軟性が評価されるはずだ。アルテタの戦術はポジションの流動性を重視しており、久保のインテリジェンスはその哲学に合致する。
さらに、マルティン・ウーデゴールやマルティン・スビメンディ、ミケル・メリーノら元レアル・ソシエダ勢が揃うアーセナル。アルテタ監督もまたソシエダに在籍していた経験もあり、スペイン語が堪能な久保がチームに馴染むのは問題ないだろう。
ただし、移籍交渉は容易ではない。レアル・マドリードが久保の移籍金の50％を保持しているため、ソシエダは実質的に倍額を要求する構造となっている。アーセナルが4500万ユーロで合意を狙う一方、ソシエダは6000万ユーロを譲らない可能性が高い。
プレミアリーグでの適応と日本サッカーへの影響
久保がアーセナルに移籍すれば、日本サッカー界にとって歴史的な瞬間となる。プレミアリーグは世界最高峰の舞台であり、そこで主力として戦う姿は次世代の日本人選手に大きな刺激を与えるだろう。三笘薫がブライトンで証明したように、日本人選手がプレミアで輝くことはもはや夢物語ではない。久保がその流れをさらに加速させる存在となる可能性は高い。
また、アーセナルの攻撃陣に久保が加われば、クラブのマーケティング面でも大きな効果を生む。日本市場での人気拡大はもちろん、アジア全体でのブランド価値向上にもつながる。クラブにとっては戦力強化と商業的利益を同時に得られる理想的な補強となるだろう。
個人的な見解
ソシエダの不振、本人のキャリア志向、そしてアーセナルの補強戦略が三位一体となり、交渉の舞台は整いつつある。た
だし、私はこの移籍が冬に成立する可能性は五分五分だと考えている。
ソシエダにとって久保は攻撃の生命線であり、冬の放出はクラブの存続に直結するリスクを伴う。むしろ、来夏の移籍市場での大型ディールに持ち越される可能性が高いだろう。
それでも、久保がプレミアリーグでプレーする姿を想像すると胸が高鳴る。
日本人選手が欧州の頂点を狙うクラブの主力として戦う日が来れば、それは日本サッカー史における新たな金字塔となるはずだ。
久保がアーセナルの赤いユニフォームに袖を通すかどうかは、今後数か月の交渉とソシエダの成績次第だ。
しかし、彼のキャリアが次のステージに進むことは間違いない。プレミアの舞台で、久保がどのように輝きを放つのか――その瞬間を待ち望むファンは、世界中にいる。