ジャラッド・ブランスウェイトが、またしてもマンチェスター・ユナイテッドの補強リストに浮上している。英『CaughtOffside』によれば、ユナイテッドは来夏に向けてエヴァートンの左利きセンターバック獲得を本格的に検討しているようだ。
昨夏に5000万ポンドのオファーを提示しながらも、エヴァートンの7000万ポンドという強気な要求により撤退したはずのターゲットに、なぜ再び巨額を投じようとしているのか。その背景には、戦術的な再編成と選手構成の変化が絡んでいる。
ブランスウェイトの現在地:評価急上昇の理由
ブランスウェイトの魅力は、単なるフィジカルの強さだけではない。195cm超の体格に加え、左足から繰り出されるビルドアップ能力、ポジショニングの精度、そして空中戦での支配力。2023-24シーズンには公式戦41試合に出場し、エヴァートンの残留に大きく貢献。さらに、2024年6月にはイングランド代表デビューも果たし、国際舞台でも評価を高めている。
現在はハムストリング負傷からの回復途上。今シーズンはまだピッチに立てていないものの、依然としてイングランドでもトップレベルのセンターバックとしての評価は揺らいでいない。
マンチェスター・ユナイテッドは2024年夏に、レニー・ヨロとマタイス・デ・リフトという2人のセンターバックを獲得。ヨロは19歳ながらも欧州トップクラブが争奪戦を繰り広げた逸材であり、デ・リフトはバイエルンでの経験を持つ即戦力。
さらに、ルベン・アモリム監督の3バックシステムでは、ルーク・ショー、リサンドロ・マルティネス、アイデン・ヘヴンといった左利きCBがすでに揃っている。
このような状況下で、ブランスウェイト獲得に再び動く理由として挙げられているのが、ハリー・マグワイアの退団予定だ。今シーズン限りで契約満了が近づいており、クラブは延長の意思を示していない。つまり、来夏にはセンターバックの層が薄くなる可能性がある。
また、アモリム監督の3-4-2-1システムでは、3人のCBが常時必要となるため、ローテーションや怪我を考慮すると、6〜7人のCBが必要になる。現状ではヨロ、デ・リフト、マルティネス、ショー、ヘヴン、マグワイア、マズラウィと8人が候補だが、来夏には2人が退団し、ショーやマルティネスも怪我がちであることを考えると、補強は理にかなっているようにも見える。
しかし、問題は「誰を取るか」だ。ブランスウェイトは確かに優れた選手だが、既存戦力とのプレースタイルの重複が懸念される。特にヨロとの併用は、ビルドアップの起点が左に偏る可能性があり、戦術的なバランスを崩すリスクもある。
エヴァートンの事情と移籍の可能性
エヴァートン側も、ブランスウェイトの流出を簡単には許さない構えだ。2030年まで契約が残っており、さらに新オーナーとしてローマのダン・フリードキン氏が買収を進めていることで、財政的な安定が見込まれている。クラブはブランスウェイトを最高年俸クラスに引き上げる意向も示しており、慰留に本腰を入れている。
とはいえ、選手本人はユナイテッドとの個人合意をすでに済ませており、トップクラブでの挑戦を望んでいる。エヴァートンが今季も下位に沈むようであれば、本人の意思が移籍に傾く可能性は十分にある。現時点では冬の移籍は非現実的だが、来夏には交渉が再開される見込みだ。
個人的な見解
ブランスウェイトの獲得は、ユナイテッドにとって「選手層の維持」という観点では理解できる。しかし、補強の優先順位としては疑問が残る。
現状のユナイテッドが本当に必要としているのは、守備的MFやリンクマンとして機能する中盤の選手だ。マヌエル・ウガルテの獲得はその一環だが、まだ不十分。攻撃と守備の接続を担える選手こそが、今のユナイテッドにとっての「心臓部」だ。
また、ブランスウェイトの獲得がヨロやヘヴンの成長機会を奪う可能性もある。若手育成と即戦力補強のバランスをどう取るかは、INEOS体制の今後を占う重要なポイントだ。
補強は「良い選手を取る」ことではなく、「必要な選手を取る」こと。ユナイテッドが本当に再建を目指すのであれば、ポジションバランスと戦術的整合性をもっと緻密に設計すべきだ。
