ガブリエウ・マルティネッリの名前が、再びバイエルン・ミュンヘンの補強リストに浮上している。ドイツのメディアが報じるところによれば、アーセナルの快速ウィンガーは、バイエルンの攻撃陣再編における“再考候補”としてリストアップされ続けている。
この夏、バイエルンはリヴァプールからルイス・ディアスを獲得したが、実はその裏でマルティネッリにも具体的な関心を寄せていた。
ドイツ紙『BILD』クリスティアン・ファルク氏によると、バイエルンは3000万〜3500万ユーロのオファーを検討したものの、アーセナル側は即座に拒否。交渉の余地すら与えなかったという。それでも代理人との接触は行われており、クラブ内部では「将来的な選択肢」として彼の名前が残り続けている。
アーセナルでのマルティネッリ──数字と印象の乖離
マルティネッリは、2019年にイタウアーノからアーセナルへ加入して以来、公式戦で51得点を記録。昨季は51試合で15ゴール・アシストを記録し、数字上は一定の貢献を果たしている。しかし、2022–23シーズンのキャリアハイ(プレミアリーグ15得点)以降、2シーズンで14得点とペースは鈍化。特に2024–25シーズンは、終盤戦でのパフォーマンス低下が目立ち、ファンの間でも評価が揺れている。
ミケル・アルテタ監督は、攻撃陣の再編を模索しており、ノニ・マドゥエケを獲得した。また、センターフォワードにはヴィクトル・ギョケレスを補強。この動きは、マルティネッリの立場が盤石ではないことを示している。アーセナルが新たなウィンガー獲得に動けば、彼の出場機会は確実に減少する。
さらに、バルセロナもマルティネッリに関心を示しているとされ、アーセナルが彼を“売却可能な資産”と見なす可能性もある。クラブは2027年までの契約を結んでいるが、移籍市場における柔軟性を持たせるために、選手の放出を選択することは十分にあり得る。
バイエルンの補強戦略──“疾走型ウィンガー”への再評価
バイエルンがマルティネッリに再び目を向ける背景には、クラブの攻撃陣における変化がある。リレロイ・サネがガラタサライへ移籍し、キングスレイ・コマンもアル・ナスルに新天地を求めており、ヴィンセント・コンパニ新監督はウィングの補強を急務としている。
バイエルンは現在、アスレティック・クラブのニコ・ウィリアムズ、ACミランのラファエウ・レオン、さらにはリヴァプールのコーディ・ガクポにも関心を示しているが、いずれも高額な移籍金が必要とされる。
そうした中で、マルティネッリは“比較的リーズナブルな選択肢”として再浮上している。市場価値は約£47mとされており、年齢も24歳と伸び盛り。両サイドでプレー可能な柔軟性も、バイエルンの戦術にフィットする可能性を秘めている。
ただし、課題もある。マルティネッリのプレースタイルは、カウンター時の推進力と個人技に依存する傾向が強く、バイエルンのようなポゼッション志向のチームにおいては、ポジショニングや連携面での成熟が求められる。トーマス・トゥヘル前監督が彼をリストアップしていたのも、プレミアリーグでの経験を重視した結果であり、コンパニ体制下での評価は未知数。
それでも、バイエルンのスカウト部門は「リストに残す価値がある」と判断している。クラブの補強戦略は、複数の選手に同時にアプローチし、状況に応じて優先順位を変える“スプレッド型”であり、マルティネッリのような選手が再浮上する可能性は常にある。
個人的な見解
マルティネッリのバイエルン移籍話は、表面的には沈静化しているように見えるが、実際には“静かな熱”を帯びている。
トゥヘルの退任によって一度は冷却されたが、コンパニ体制下でも彼の名前が残っているという事実は、クラブが彼のポテンシャルを高く評価している証左だ。
個人的には、マルティネッリがバイエルンにフィットするには、戦術的な再教育が不可欠だと考える。彼の爆発力は魅力的だが、バイエルンのような“構築型”のチームでは、ポジショニングや連携面での精度が求められる。
もし彼がその壁を乗り越えられるなら、ミュンヘンの地で“完成されたウィンガー”として花開く未来も見えてくる。その瞬間を、我々は見逃すべきではない。
また、アーセナルにとってもこの交渉は“選手の価値を再定義する機会”となる。マルティネッリを放出することで得られる資金は、攻撃陣の再編に直結する。
クラブが本気でタイトルを狙うなら、感情ではなく合理性で判断すべき局面に来ている。マルティネッリの未来は、彼自身の成長曲線と、両クラブの戦略が交差する地点で決まるだろう。