マンチェスター・シティの中盤を支える知性、ベルナルド・シウバ。その名が、サウジアラビアの壮大なフットボール構想の中心に据えられている。彼の去就を巡る動きは静かに、しかし確実に加速している。サウジ側は2年以上にわたり断続的な交渉を続けており、4年契約の提示が具体的に議論されている。
今季、グアルディオラはベルナルド・シウバをキャプテンに任命。マンチェスター・ダービーではアシストを記録し、今季すでに7試合に出場している。だが、契約は2026年夏まで。つまり、来年1月には他クラブとの自由交渉が可能となり、サウジのクラブ、アル・ヒラルやアル・ナスルが関心を示していると、英『talkSPORT』が伝えた。
サウジが求める“戦術の翻訳者”──ベルナルド・シウバの価値
ベルナルド・シウバは、単なる技巧派ではない。彼のプレーには、空間認知、タイミング、そして戦術理解が凝縮されている。ペップ・グアルディオラの下で400試合以上に出場し、6度のプレミアリーグ制覇、チャンピオンズリーグ優勝を含む数々のタイトルを獲得してきた。
サウジ・プロリーグは、スター選手の獲得によって注目を集めているが、戦術的な成熟度はまだ発展途上。ベルナルド・シウバのような“戦術の翻訳者”は、ピッチ上での秩序をもたらす存在となる。彼のような選手が加わることで、リーグ全体のプレー精度と戦術的深度が一段階引き上げられる可能性がある。
さらに、彼のポジション適応力は特筆すべきだ。インサイドハーフ、ウイング、偽9番…どの役割でも違和感なく機能する。これは、サウジのクラブが多様な戦術を模索する中で、極めて貴重な資質だ。
また、彼のプレースタイルは、単にボールを動かすだけでなく、試合のリズムそのものを操る力を持っている。これは、サウジリーグが求める“試合を支配する司令塔”という理想像にぴたりと重なる。
サウジの野望と“次なる標的”──ブルーノ・フェルナンデス、ハリー・ケイン、アンドレイ・サントス
ベルナルド・シウバだけではない。サウジは、2026年に向けてさらなる欧州スターの獲得を狙っている。中でも、マンチェスター・ユナイテッドのキャプテン、ブルーノ・フェルナンデスは、交渉が最も進んでいる選手の一人だ。ベン・ジェイコブス氏によれば、サウジの交渉担当者はブルーノ獲得に強い自信を持っている。
2025年には、アル・ヒラルが週給70万ポンドという破格のオファーを提示したが、ブルーノはユナイテッド残留を選択した。しかし、クラブの不振が続けば、2026年の移籍に前向きになる可能性は十分にある。彼のような“攻撃的司令塔”は、サウジリーグのエンタメ性を高める存在としても魅力的だ。
ハリー・ケインに関しては、プレミアリーグでの記録更新という夢があるため、サウジ移籍の可能性は低いと見られているが、オファーは確実に届くだろう。彼のフィジカルと得点力は、どのリーグでも通用する。アンドレイ・サントスは若手ながら、将来的な投資対象としてリストアップされている。チェルシーでの出場機会が限られている現状を考えれば、サウジでの成長を期待する声もある。
サウジの戦略は明確だ。単なるスター獲得ではなく、リーグの競技レベルとブランド価値を同時に引き上げること。そのためには、ベルナルド・シウバのような“完成された知性”が不可欠なのだ。
個人的な見解
ベルナルド・シウバの移籍は、金銭的な条件だけでは語り尽くせない。
彼のような選手がサウジへ渡ることは、リーグの成熟度を測る試金石でもある。もし彼が移籍を決断すれば、それはサウジ・プロリーグが“次のステージ”へ進む合図となるだろう。
一方で、彼のプレースタイルは、欧州のハイテンポな環境でこそ輝く側面もある。サウジでその輝きを保てるか…そこには未知数が残る。
だが、彼の知性とプロフェッショナリズムがあれば、環境適応は十分に可能だと信じている。
2026年の夏、ベルナルド・シウバがどのユニフォームを纏っているのか──その答えは、サウジの野望、そして彼自身のキャリア哲学が交差する場所にある。ファンとしても、その瞬間を見届けたい。