ジョー・ゴメスの物語は、リヴァプールで完結するとは限らない。イタリア紙『Calciomercato』によれば、ACミランがこの冬の移籍市場でゴメス獲得に向けて再び動き出しているようだ。夏に一度は破談となったこの取引が、再び現実味を帯びてきた背景には、ミランの守備陣の不安と、リヴァプールの構造的な再編がある。
ACミランの守備強化計画とゴメスに再接近する理由
ACミランはジョー・ゴメス獲得に向けて1月のオファー準備を進めている。夏にも交渉は進んでいたが、リヴァプールが代替選手を確保できなかったため、最終的に移籍は成立しなかった。
ミランは現在、フィカヨ・トモリとストラヒニャ・パヴロヴィッチを中心に3バックを構成しているが、バックアップには経験不足の若手が並ぶ。マッシミリアーノ・アッレグリ監督は、ヨーロッパでの経験を持ち、複数ポジションをこなせる守備のリーダーを求めており、ゴメスはその理想像にぴたりと当てはまる。
ゴメスは今季、プレミアリーグでわずか29分しか出場しておらず、スロット監督の構想外となっているのは明らかだ。この状況をミランは見逃さず、冬の移籍市場での獲得を本格化させる構えだ。
リヴァプールの守備再編…グエヒ獲得とゴメス放出の可能性
一方、リヴァプール側も守備陣の再編を急いでいる。ジョヴァンニ・レオーニのACL断裂により、ファン・ダイク、コナテ、ゴメスの3人しかセンターバックが残っていない状況は、タイトル争いを目指すクラブにとって危険すぎる。
その中で、クリスタル・パレスのマルク・グエヒ獲得が現実味を帯びてきた。リヴァプールは1月の獲得に向けて交渉を再開しており、パレス側も契約満了を前に売却に前向きな姿勢を見せている。
グエヒが加入すれば、ゴメスの放出は一気に現実的な選択肢となる。リヴァプールはゴメスの市場価値を2000万ポンドと見積もっており、ミランがその額に近いオファーを提示すれば、交渉は一気に進展する可能性がある。
ただし、スロット監督は慎重な姿勢を崩していない。ゴメスはセンターバックだけでなく、左右のサイドバックもこなせる貴重なユーティリティプレイヤー。負傷明けのレオーニに過度な負担をかけないためにも、ゴメスの残留は戦術的に意味がある。
ゴメスの選択は?キャリア再起か、クラブへの忠誠か
ゴメス自身も、キャリアの岐路に立っている。28歳という年齢は、トップレベルでの再起を図るには最適なタイミング。イタリアの戦術的な環境は、彼の読みとカバーリング能力を最大限に活かせる舞台だ。
一方で、リヴァプールでの10年にわたるキャリアは、彼にとって特別な意味を持つ。クロップ体制下での黄金期を支え、244試合に出場した彼は、クラブのDNAを体現する存在でもある。ファン・ダイクも「彼は素晴らしい仲間であり、選手としても尊敬している。残ってほしい」と語っている。
だが、サッカーは感情だけでは動かない。スロット監督が掲げる「機能性重視」の哲学のもとでは、出場機会の限られたベテランに居場所がなくなる可能性もある。ゴメスが新天地を選ぶか、クラブへの忠誠を貫くかの選択は、彼自身の未来を大きく左右する。
個人的な見解
ACミランの再接近は、ジョー・ゴメスにとって“最後のチャンス”ではなく、“新たな挑戦”の始まりかもしれない。
彼のキャリアは、負傷と復活を繰り返しながらも、常に誠実さとプロフェッショナリズムに満ちていた。イタリアの舞台で、彼が再び輝く姿を見られるなら、それはサッカーファンにとっても喜ばしいことだ。
一方で、リヴァプールにとってもこの冬は守備陣の再編における重要な分岐点となる。グエヒの獲得が決まれば、ゴメスの放出は避けられないかもしれない。
だが、スロット監督がどこまで“多様性”を重視するかによって、ゴメスの残留も十分にあり得る。感情と合理性、忠誠と進化。その狭間で揺れるリヴァプールの選択が、今季の成否を左右する鍵となる。
