アルダ・ギュレルの名前が、再び欧州の移籍市場を熱くしている。レアル・マドリードで輝きを放つこの20歳のトルコ人プレーメーカーに対し、アーセナル、トッテナム・ホットスパー、ニューカッスル・ユナイテッドといったプレミアリーグの強豪が本格的なスカウティングを再開したと、英『Caught Offside』が伝えた。
ギュレルは2023年にフェネルバフチェからレアル・マドリードへ移籍。初年度は怪我に悩まされ、出場機会も限られていたが、2年目からは徐々に出番を増やし始めた。
今夏にはカルロ・アンチェロッティからシャビ・アロンソへと監督が交代すると、状況は一気に好転。今季はラ・リーガ開幕から7試合中6試合に先発出場し、502分のプレータイムで3ゴール3アシストを記録。9月16日のチャンピオンズリーグ・マルセイユ戦では、試合を通じて攻撃の起点となり、スペインメディアから「トルコの魔術師」と称賛された。
プレミアリーグ勢の動きとギュレルの現在地
アーセナルは、マルティン・ウーデゴールのバックアップとして、また将来的にはレアンドロ・トロサールの後継としてギュレルを見据えている。昨季から継続的にスカウティングを行っており、今季もラ・リーガの試合にスカウトを派遣している。ギュレルの中央とサイドの両方でプレー可能な柔軟性は、ミケル・アルテタの戦術にフィットする可能性が高い。
トッテナムも創造性の強化を求めており、ジェームズ・マディソンやデヤン・クルゼフスキとの競争を前提にギュレル獲得を検討している。ただし、出場機会の確保が難しい可能性もあり、ギュレル自身が移籍に慎重な姿勢を見せる要因となっている。
ニューカッスル・ユナイテッドは、ジョエリントンの退団が現実味を帯びる中、ギュレルをその後釜としてリストアップ。ミラン、ドルトムント、RBライプツィヒ、さらにはユヴェントスやパリ・サンジェルマンまでもがギュレルの動向を注目しており、彼の市場価値は急上昇している。
レアル・マドリードの方針とギュレルの未来
レアル・マドリードは、ギュレルを「スポーツ的成功と長期戦略の両面における投資対象」と位置づけており、移籍市場に出す意思は一切ない。フロレンティーノ・ペレス会長はギュレルの成長に満足しており、現行の年俸500万ユーロを倍増させた1000万ユーロの新契約を9月中に締結する予定。
この契約は、ギュレルの長期的な残留を保証するだけでなく、外部からの誘惑を遮断する盾にもなる。実際、シャビ・アロンソ監督はギュレルを中盤の創造性の核として起用し続けており、9月23日のラ・リーガ・レバンテ戦でもフル出場。試合後の記者会見でアロンソは「彼の視野と判断力は、すでにトップレベルにある」と語っている。
とはいえ、サッカー界において「非売品」という言葉が永遠を意味することはない。特に、ジュード・ベリンガムの復帰によって、今後ギュレルのポジションに影響が出る可能性もある。アーセナルやスパーズがその隙を突いて、2026年夏に本格的なオファーを出すシナリオは十分に考えられる。
ギュレルのプレースタイルと成長曲線
ギュレルの最大の魅力は、狭いスペースでも冷静にボールを捌ける技術と、相手の守備ラインを切り裂くパスセンスにある。彼のプレーには、トルコの伝統的な技巧とスペインで磨かれた戦術理解が融合しており、すでに完成された未完の大器と呼ぶにふさわしい。
特に、今季のクラブワールドカップでのボルシア・ドルトムント戦では、2アシストを記録し、チーム・オブ・ザ・ウィークにも選出された。この試合を現地で視察していたドルトムントのスカウトは「彼の視野は、我々の中盤に足りない要素そのもの」と語っている。
ギュレルは現在、レアル・マドリードの中盤において、ベリンガム、カマヴィンガ、バルベルデと並ぶ存在感を放っている。彼の成長曲線は右肩上がりであり、今後数年で欧州トップレベルの司令塔へと進化する可能性は極めて高い。
個人的な見解
アルダ・ギュレルは、単なる若手有望株ではない。
彼のプレーには、瞬間的なひらめきと構造的な理解が共存しており、スペインの戦術文化とトルコの創造性が見事に融合している。
特に、相手のプレスを逆手に取るターンと、縦への鋭いパスは、ウーデゴールやマディソンと比較しても遜色ない。プレミアリーグのフィジカルに適応できれば、彼は中盤の支配者になれるだろう。
ただし、現時点での移籍は、ギュレル自身にとっても、彼を獲得しようとするクラブにとってもリスクが大きい。
レアル・マドリードでの出場機会と信頼を得ている今、彼が焦って環境を変える必要はない。むしろ、2026年以降に市場が再び動くタイミングで、ギュレルがどのような選択をするかが、彼のキャリアを決定づける分岐点になるだろう。
その時、彼がどのユニフォームを着ているか…それが今から楽しみでならない。