2024-25シーズン、クラブ史上初のFAカップ制覇を成し遂げたクリスタル・パレス。ヨーロッパリーグ初出場を控える中で、補強戦略にも拍車がかかっている。そんな中、注目を集めているのが、ミドルスブラに所属する24歳のミッドフィルダー、フィン・アザズだ。
2024年1月にアストン・ヴィラからミドルスブラへと完全移籍したアザズは、わずか半年でチャンピオンシップ屈指のアタッカーとして名を轟かせた。2024-25シーズンのリーグ戦では12ゴール11アシストを記録。攻守にわたり高い貢献度を示し、ピッチでの存在感は日に日に増していった。
彼のキャリアはウェスト・ブロムウィッチのアカデミーから始まり、ニューポート・カウンティやプリマス・アーガイルなどで経験を積んだのち、2021年にアストン・ヴィラへとステップアップ。しかしトップチームでの出場は叶わず、レンタル先でのパフォーマンスがミドルスブラからのオファーを引き寄せた。
マイケル・キャリック監督の下でレギュラーに定着し、チームの攻撃を牽引してきたが、ミドルスブラは3季連続でプレーオフ進出に失敗。キャリックもシーズン終了後に解任されるなど、クラブは過渡期に突入している。
その中でアザズの将来にも不透明感が広がり、夏のマーケットでのステップアップは極めて現実的な選択肢として浮上している。
パレスが狙う「次世代の主軸」 エゼ退団の布石か
クリスタル・パレスがフィン・アザズに熱視線を送る理由は明白。クラブはチャンピオンシップ出身の若手を獲得し、プレミアリーグの舞台で開花させるという成功モデルを何度も築いてきた。
マイケル・オリーセ、エベレチ・エゼ、アダム・ワートンなど、近年の事例はどれも同様の路線から導かれている。アザズはまさにその延長線上にいるタレントであり、特にエゼの去就が不透明な中で、後釜候補として急浮上していると英『Evening Standard』は報じている。
オリバー・グラスナー監督の下、パレスはさらなる高みを目指すためにもスカッドの厚みを求めており、ヨーロッパリーグという新たな舞台に挑む上でも、アザズのような選手の加入は不可欠だ。
また、パレスはUEFAからの承認待ちという難題も抱える。オーナーであるジョン・テクスター氏がリヨンの経営にも関与しているため、クラブのヨーロッパリーグ出場資格に影響が及ぶ可能性が指摘されている。しかし、クラブ側はテクスター氏が支配的影響力を持っていないとし、出場認可に向けた働きかけを継続している。
現時点ではクリスタル・パレスが先行していると見られるが、他のクラブも黙ってはいない。来季プレミアリーグに昇格を果たすリーズ・ユナイテッドは、攻守のバランスを再構築する中でアザズを注視している。
さらにボーンマスも資金面で優位に立っている。若手DFディーン・ハイセンのレアル・マドリード移籍が進行中であり、左SBミロス・ケルケズもリバプールへの移籍が現実味を帯びている。これらの売却資金を補強に充てる構えで、アザズへの正式オファーを準備している。
だが、選手育成の面で定評のあるパレスのアプローチは、若手にとって非常に魅力的なものに映るだろう。エゼやオリーゼのようにキャリアを一段階引き上げた前例があることは、大きな説得材料になり得る。
わずか半年でその評価を一変させたアザズ。果たして彼の次なるステージはプレミアリーグの中堅クラブ、あるいはヨーロッパを見据えるパレスになるのか。サマーウィンドウの注目株として、今後の動向から目が離せない。