ユヴェントスのストライカー、ドゥシャン・ヴラホヴィッチが、再び欧州の移籍市場を騒がせている。チェルシーとマンチェスター・ユナイテッドが1月の獲得に向けて本格的な動きを見せており、イタリア国内では「冬の主役」として注目が集まっていると、イタリア紙『Gazzetta』が報じた。
ヴラホヴィッチは今季、開幕から公式戦6試合で4得点1アシストと好調なスタートを切った。だが、ユヴェントスでの立場は不安定。ジョナタン・デイヴィッドやロイス・オペンダとのポジション争いが激化し、出場時間は分散されている。クラブ側は2026年夏の契約満了を前に、移籍金を得る最後のチャンスとして今冬の売却を視野に入れている。
プレミアリーグ勢の動きとユヴェントスの焦り
マンチェスター・ユナイテッドは、ジョシュア・ザークツィーの将来的な不確定要素を抱えており、ストライカーの補強は急務。夏にもヴラホヴィッチ獲得を検討していたが、条件面で折り合わず断念。しかし、ユヴェントスが今冬にバーゲン価格での放出を容認する姿勢を見せていることで、再び交渉のテーブルに着く可能性が高まっている。
一方のチェルシーも、新戦力のリアム・デラップが負傷で離脱してしまい、タイリーク・ジョージらがチャンスを得ているものの、センターフォワードの陣容強化も視野に入れている。即戦力かつ若さを兼ね備えたヴラホヴィッチは理想的なターゲットだ。クラブはすでにヴラホヴィッチ側と接触を図っており、給与面での調整が進めば、1月の電撃移籍も現実味を帯びてくる。
さらに、バルセロナやアトレティコ・マドリードも来夏のフリー移籍を狙って水面下で動いているが、ユヴェントスとしては今冬に売却して少しでも移籍金を得たいというのが本音。このタイミングで動けるクラブこそが、ヴラホヴィッチ争奪戦を制する可能性が高い。
ヴラホヴィッチの現在地と欧州クラブの思惑
ヴラホヴィッチは2022年にフィオレンティーナからユヴェントスへ移籍し、以降151試合で62得点15アシストを記録。数字だけ見れば十分な成果だが、クラブ内での評価は揺れている。特に昨季は負傷や戦術的な不一致もあり、安定感を欠いた。今季は序盤から得点を重ねているものの、出場機会の不確定性が続く限り、本人も移籍を前向きに捉えているとされる。
バイエルン・ミュンヘンも最近になってヴラホヴィッチに関心を示したが、まだ具体的な交渉には至っていない。ファブリツィオ・ロマーノ氏によれば、バイエルンはヴラホヴィッチの希望年俸や移籍意志を確認するために複数回の接触を行ったが、現時点では「情報収集の段階」にとどまっている。
一方、バルセロナはロベルト・レヴァンドフスキの高齢化に伴い、次世代のストライカーを探しており、ヴラホヴィッチはその候補の一人だ。マンチェスター・ユナイテッドも、ザークツィーの不安定なパフォーマンスを受けて、再びヴラホヴィッチに目を向けている。
ユヴェントスとしては、8350万ユーロという巨額の投資を少しでも回収したいという思惑がある。だが、夏の移籍市場では売却に失敗しており、冬の市場での交渉はよりシビアになるだろう。クラブ内では、ヴラホヴィッチに出場機会を与えることで市場価値を維持しつつも、デイヴィッドやオペンダの成長を阻害しないよう、バランスを取る必要がある。
個人的な見解
ヴラホヴィッチの移籍話は、クラブの戦略と選手のキャリアが交差する極めて繊細な局面となる。
ユヴェントスは財政的な制約と戦力の再編成を迫られており、ヴラホヴィッチの売却はその象徴的な一手となる。だが、彼のような選手を手放すことは、クラブのアイデンティティにも影響を与える。
マンチェスター・ユナイテッドにとっては、攻撃の軸を再構築するラストピースになり得る存在だし、チェルシーにとっては若手中心のチームに経験と得点力をもたらす存在となる。どちらのクラブも、今冬に動くことで来夏の争奪戦を回避できるという点で、戦略的な意味合いも大きい。
個人的には、ヴラホヴィッチがプレミアリーグでその真価を発揮する姿を見てみたい。彼のフィジカルとシュートレンジは、イングランドの激しいプレースピードにも適応できるはず。
1月の移籍市場が、彼にとって新たな挑戦の扉となることを願っている。そして、彼がどのクラブを選ぶかによって、2026年シーズンの欧州サッカーの勢力図が大きく塗り替えられる可能性がある。