オールド・トラフォードのゴール前に、再びエミリアーノ・マルティネスの名前が響き渡る。マンチェスター・ユナイテッドはアストン・ヴィラの守護神に対する関心を再燃させている。夏の移籍市場で獲得に至らなかったこのアルゼンチン代表GKが、冬の補強戦略の中心に据えられようとしているのだ。
ユナイテッドは8月末、マルティネスとの個人合意に達していたと複数の報道で伝えられている。しかし、ヴィラとのクラブ間交渉がまとまらず、移籍は実現しなかった。代わりに獲得したのがロイヤル・アントワープのセネ・ラメンスだったが、即戦力として機能するには時間がかかる。現時点でユナイテッドのゴールマウスは不安定さを抱えており、アンドレ・オナナはすでにトルコに旅立っている。
マルティネスの価値は「経験」と「闘志」にある
マルティネスは現在33歳。2022年カタールW杯でアルゼンチンを優勝に導いた立役者であり、PK戦での圧倒的な存在感は記憶に新しい。彼のセービング技術はもちろん、試合の流れを読む力、そして何よりも勝利への執念がユナイテッドにとって魅力的だ。
今季のユナイテッドは、開幕から守備陣に綻びが見られる。現時点で守護神を任されているアルタイ・バユンドゥルは試合では、バーンリー戦で痛恨のミスを犯し、チームは辛くも勝利を収めたが、GKの不安定さを露呈。こうした状況で、マルティネスのような「試合を締める男」の存在は、守備陣全体の安定に直結する。
さらに、彼はヴィラで公式戦200試合以上に出場し、プレミアリーグの環境にも完全に適応している。新天地での適応に時間を要するリスクが少なく、即戦力として計算できる点もユナイテッドにとっては大きなメリット。
ヴィラとの交渉と冬の移籍市場の展望
マルティネスは2024年10月に契約延長を行っており、現行契約は2029年まで残っている。ヴィラは彼に対して約4000万ポンドの評価額を設定しており、簡単に手放すつもりはない。だが、クラブはポルトのディオゴ・コスタを後釜としてリストアップしており、マルティネス放出の準備を進めているとも報じられている。
一方、ユナイテッドは夏の移籍市場でベンヤミン・シェシュコ、ブライアン・ムベウモ、マテウス・クーニャ、ディエゴ・レオンといった攻撃的な選手を獲得しており、守備陣の補強は後回しになっていた。しかし、オナナの放出とバユンドゥルの不安定感の中、GKの補強は急務となっている。
マルティネスはヴィラのクリスタル・パレス戦でベンチ外となっており、クラブ内での立場も揺らいでいたが、その後はフル出場を果たしており、ウナイ・エメリはうまくマネジメントした印象がある。
マルティネスの魅力は、技術だけではない。彼はロッカールームでの存在感が強く、若手選手への影響力も大きい。ユナイテッドは、ルベン・アモリム監督のもとで新たな時代に突き進んでおり、支えるベテランの存在が不足している。マルティネスが加われば、ピッチ内外でのリーダーシップが期待できる。
また、彼のプレースタイルはアモリム監督の志向する「前向きな守備」にもマッチする。ラインを高く保ち、ビルドアップに積極的に関与するスタイルは、ユナイテッドの戦術にフィットする可能性が高い。ラメンスやバインディルがその役割を担うにはまだ経験が足りず、マルティネスの加入は戦術的にも理にかなっている。
個人的な見解
ユナイテッドがマルティネスに再びアプローチするのは、過去の未練ではない。
今のチーム状況を冷静に見れば、彼のような経験豊富で精神的支柱となるGKの必要性は明白。ラメンスの未熟さ、そしてバインディルのミス。これらを一掃するには、マルティネスのような「勝利を知る男」が必要だ。
個人的には、ユナイテッドがこの冬に本気でマルティネス獲得に動くべきだと考えている。彼の加入は、守備の安定だけでなく、チーム全体の士気を押し上げる可能性がある。
タイトルを狙うには、こうした「人格と実力を兼ね備えた選手」の存在が不可欠だ。オールド・トラフォードのゴール前に、再び情熱と冷静さを併せ持つ守護神が立つ日を、心から待ち望んでいる。
