2023-24シーズン、アスレティック・ビルバオを40年ぶりのコパ・デル・レイ制覇へ導いたオイアン・サンセトの名前が、プレミアリーグの移籍市場を賑わせている。
25歳となったスペイン代表MFは、ニューカッスル・ユナイテッドの最重要ターゲットとして浮上。EFLカップを制し、欧州カップ戦での飛躍を狙うマグパイズが、冬の移籍市場で7000万ユーロを投じる準備を進めていると報じられていると、スペイン紙『Fichajes』が報じた。
契約には8000万ユーロの解除条項が存在し、交渉は容易ではないが、バスクの至宝を巡る攻防は熾烈さを増している。
オイアン・サンセトのキャリアと進化
オイアン・サンセトは2000年4月、パンプローナに生まれた。オサスナのカンテラで育ち、2015年にアスレティック・ビルバオへ加入。2019年にトップデビューを果たすと、瞬く間に攻撃の中心へと成長した。これまでに公式戦200試合以上に出場し、40得点超を記録。2025年春には国王杯決勝で決定的な役割を果たし、クラブを歴史的勝利へと導いた。
彼のプレースタイルは、188cmの恵まれた体躯を活かした空中戦の強さと、攻撃的MFとしての柔軟なポジショニングにある。
トップ下での創造性に加え、セカンドストライカーや偽9番としても機能し、相手守備を混乱させる。特にイニャキ・ウィリアムスとの連携はラ・リーガ屈指の破壊力を誇り、中央で相手を引き付けながらサイドの突破を引き出すプレーは、ビルバオの攻撃を大きく押し上げてきた。
課題としては、守備面での強度やボールロストの多さが挙げられる。しかし、攻撃局面での存在感は圧倒的であり、データを見ても彼のファイナルサードでのボールタッチ数や前進回数はリーグ上位に位置している。サンセトは「ラ・リーガで最も相手守備を引き裂くMFの一人」と評されている。
ニューカッスルが狙う理由と移籍の行方
ニューカッスルがサンセトに注目する背景には、ジョエリントンの契約延長問題や、攻撃的MFの層を厚くしたいというクラブの戦略がある。エディ・ハウ監督は、プレミアリーグ上位定着と欧州カップ戦での成功を見据え、攻撃のバリエーションを増やす必要性を強調している。サンセトのようにゴール前で違いを生み出せる選手は、まさに理想的な補強候補だ。
2024/25シーズンにEFLカップを制したニューカッスルは、クラブとして新たなステージに突入している。欧州の舞台で戦うためには、攻撃的MFの補強は急務であり、サンセト獲得はその象徴的な一手となるだろう。
しかし、アスレティック・ビルバオは独自の哲学を持つクラブであり、バスク出身者や育成組織出身者のみを獲得する方針を貫いている。そのため、主力流出は常にクラブのアイデンティティを揺るがす問題となる。サンセトはその象徴的存在であり、8000万ユーロの解除条項が設定されているのも、クラブが彼を簡単には手放さない意思の表れ。
ニューカッスルが提示する7000万ユーロは破格だが、アスレティックが交渉に応じるかは不透明である。サンセト自身がプレミアリーグ挑戦を望むかどうかも大きな要素となる。2023年にスペイン代表デビューを果たし、EURO2024予選でゴールを決めた彼にとって、今後のキャリア選択は代表での地位にも直結する。
個人的な見解
オイアン・サンセトは、現代フットボールにおいて「攻撃特化型のセカンドトップ」という希少な存在だ。
彼のプレーは得点力だけでなく、味方を生かし、相手守備を切り裂くダイナミズムに満ちている。ニューカッスルが彼を獲得できれば、プレミアリーグの戦術的多様性に新たな刺激を与えることは間違いない。
ただし、アスレティック・ビルバオの哲学を考えれば、この移籍は容易には成立しない。サンセトはクラブの未来を背負う存在であり、彼を失うことはバスクの誇りを削ぐことにもつながる。
ニューカッスルが本気で彼を引き抜くなら、資金力だけでなく、プロジェクトの説得力が問われるはずだ。
個人的には、もし彼がプレミアリーグに挑戦するなら、その舞台でどれだけ自らの攻撃的才能を爆発させられるのかを見てみたい。
サンセトのキャリアにとっても、そしてニューカッスルの未来にとっても、極めて重要な岐路に立っている。
