ユヴェントスの最終ラインに立つブラジル人センターバック、グレイソン・ブレーメル。2024年10月にRBライプツィヒ戦で前十字靭帯を断裂し、長期離脱を余儀なくされた彼は、2025-26シーズンの開幕からわずか4試合で2得点を挙げ、完全復活を印象づけた。空中戦での圧倒的な強さ、対人守備の鋭さ、そしてセットプレーでの決定力。そのすべてが、プレミアリーグのビッグクラブを本気にさせている。
プレミアリーグ5強が熱を上げる理由
リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナル、そしてマンチェスター・シティ。いずれも欧州の頂点を狙うクラブだが、守備の補強は共通の課題となっている。
リヴァプールは、イブラヒマ・コナテの契約満了が迫る中、守備の軸を担える即戦力を探している。英『TEAMtalk』のルディ・ガレッティ氏によれば、2024年夏にはブレーメル獲得に「極めて近づいていた」とされ、今冬の再挑戦は現実味を帯びている。
ユナイテッドもまた、ルベン・アモリム監督の下で守備の再構築を急いでいる。ブレーメルが「最優先ターゲット」としてリストアップされていると報じ、1月の獲得を真剣に検討していると伝えた。失点の多さに悩むチームにとって、彼の加入は即効性のある解決策となる。
チェルシーは、守備陣に深刻な不安を抱えている。今季はレヴィ・コルウィルが前十字靭帯を断裂し長期離脱、さらにトレヴォ・チャロバーが直近の試合で退場処分を受け、ウェズレイ・フォファナやトシン・アダラバイオも負傷離脱中と、センターバックの選択肢が著しく限られている。
エンツォ・マレスカ監督は夏の移籍市場で補強を望んでいたが、攻撃陣の補強を優先したため実現せず、クラブは現在、冬の移籍市場での新戦力獲得を「最優先課題」として動いている。
ユヴェントスの強硬姿勢と移籍金の現実
『Transfermarkt』による市場価値は5000万ユーロだが、ユヴェントスはブレーメルを「売却不可」と位置づけている。クラブは彼をケナン・ユルディズと並ぶ「不可侵の存在」として扱っており、7000万〜8000万ユーロのオファーでなければ交渉のテーブルにすら着かないという。
それでも、プレミア勢はこの金額を「過大」とは見ていない。むしろ、即戦力としての完成度と、試合を決定づける守備者としての存在感を考えれば、投資に見合うと判断している。
昨年のACL断裂は、ブレーメルにとってキャリア最大の試練だった。しかし、彼はその困難を乗り越え、今季のセリエAで再び輝きを放っている。4試合で2得点という数字は、単なる偶然ではなく、彼の空中戦支配力とポジショニングの鋭さが健在であることを証明している。
この復活劇は、プレミアリーグのスカウト陣にとって「確信」を与える材料となった。怪我明けでも高いパフォーマンスを維持できる選手は、チームに安定と信頼をもたらす。特に、タイトル争いにおいて守備の安定は不可欠であり、ブレーメルのような選手は「勝利を呼び込む守備者」として重宝される。
ユヴェントスは強硬な姿勢を崩していないが、プレミアリーグの資金力と選手本人の意欲が交差すれば、移籍は一気に現実味を帯びる。ブレーメル自身も過去に「プレミアリーグでのプレーは夢」と語っており、今冬の市場でその夢が現実になる可能性は高い。
個人的な見解
ブレーメルのプレースタイルは、プレミアリーグの激しいテンポとフィジカルコンタクトに完璧に適応する。
彼の空中戦支配力、対人守備の強さ、そしてライン統率力は、リヴァプールやユナイテッドのようなハイラインを敷くチームにとって、まさに「守備の要」となり得る存在だ。
特にリヴァプールにとっては、コナテの退団が現実味を帯びる中、ブレーメルの獲得は守備の再構築における最重要課題となるだろう。
一方で、8000万ユーロという金額はクラブにとって大きな賭けでもある。28歳という年齢、過去の怪我歴、そしてユヴェントスの強硬な姿勢。これらの要素が複雑に絡み合い、交渉は容易ではない。
しかし、即戦力としての完成度、そして試合を決定づける守備者としての存在感を考えれば、投資に見合う価値は十分にある。
今冬の移籍市場で、ブレーメルがプレミアリーグの主役となる可能性は極めて高い。各クラブの動向から目が離せない。
