ヴァスコ・ダ・ガマの19歳ウインガー、ライアン。彼の名前が、今プレミアリーグの移籍市場を席巻している。チェルシー、トッテナム、ノッティンガム・フォレスト、ブライトンの4クラブが獲得に向けて本格的に動いており、南米から欧州への“次なる成功モデル”として注目を集めていると、イタリア紙『Calciomercato』が伝えた。
ライアンは今季43試合に出場し、12ゴール1アシストを記録。その数字以上に、ピッチ上で放つ爆発力と柔軟性が、欧州のスカウト陣を惹きつけてやまない。身長185cm、左足の強烈なシュート、空中戦の強さ、そして右サイドからの鋭いカットイン。
彼は“現代型ウインガー”として完成度が高く、『Football Talent Scout』でも「アドリアーノを彷彿とさせる、破壊力と多様性を備えたフォワード」と評している。
プレミア4クラブの動向:誰がライアンを手にするのか?
まずチェルシー。2023年にヴァスコからアンドレイ・サントスを獲得し、2024年にはパルメイラスからエステヴァン・ウィリアンを引き抜いた実績がある。南米市場への深い理解と、若手育成への投資姿勢は、ライアンにとって魅力的な環境だ。すでにクラブはライアンの代理人と接触しており、交渉の土台は整いつつある。
トッテナムもまた、リシャルリソンとのブラジルコンビ形成を視野に入れ、攻撃陣の再構築を急いでいる。ソン・フンミンがMLSへ移籍したことで、左サイドの穴を埋める即戦力を求めており、ライアンのフィジカルとスピードは理想的な補強となる。トーマス・フランク監督は若手育成に定評があり、ライアンを中心に新たな攻撃ユニットを構築する可能性もある。
ブライトンは、世界中から逸材を発掘するスカウティング力に定評があり、ライアンに目をつけたこと自体が彼のポテンシャルを証明している。モイセス・カイセドやアレクシス・マック・アリスターのように、無名の若手を一流選手へと育て上げた実績は、ライアンにとっても魅力的な成長環境となるだろう。
ノッティンガム・フォレストもブラジル市場に積極的で、今夏にはボタフォゴからイゴール・ジェズスとジャイル・クーニャを獲得。クラブはライアンを“次なる柱”として位置づけており、出場機会を保証することで他クラブとの差別化を図っている。
ライアンのプレースタイルと欧州適応力
ライアンの最大の武器は、スピードとフィジカルを兼ね備えたドリブル突破。右サイドから左足でカットインし、強烈なシュートを放つスタイルは、プレミアリーグのテンポにも適応しやすい。さらに、空中戦にも強く、セットプレーでも得点源となり得る点は、トッテナムやチェルシーのようなフィジカル重視のクラブにとって魅力的だ。
2025年のブラジレイロンでは、ヴァスコが苦戦する中でもライアンは7ゴール1アシストと結果を残しており、クラブの希望の光となっている。監督のフェルナンド・ジニスも「非常に稀有な選手。19歳であの成熟度。ヴァスコにとって大きな助けになる」と絶賛している。
また、ライアンはU-20代表経験を持ち、近くA代表への初招集も噂されている。これはイングランドでの労働許可取得にも有利に働く要素であり、移籍実現の可能性を高めている。
現在の契約には4000万ユーロの解除条項が設定されているが、ヴァスコは契約延長によってこの金額を引き上げようとしているとも報じられている。とはいえ、プレミア勢の資金力を前にすれば、交渉の主導権は欧州側にある。
個人的な見解
ライアンの争奪戦は、単なる若手獲得競争では終わらない。
これは、南米と欧州のスカウティング哲学、育成文化、そしてクラブの未来像が交錯する、サッカーのグローバル化を象徴する一幕だ。
トッテナムやチェルシーのようなクラブが、ブラジルの若手に早期から目をつけ、現地にスカウトを派遣し、労働許可の取得まで見据える動きは、もはや“投資”ではなく“戦略”そのものだ。
個人的には、ライアンがプレミアリーグで成功する可能性は非常に高いと見ている。彼のフィジカル、スピード、そして左足の破壊力は、イングランドの激しいプレッシャーにも耐えうる武器だ。
加えて、彼の柔軟なポジショニングと空中戦の強さは、戦術的にも多様な使い方ができる。もしトッテナムが獲得に成功すれば、リシャルリソンとのブラジルコンビが新たな攻撃の軸となるだろうし、チェルシーならば若手育成の文脈で長期的な成長が期待できる。
ブライトンやノッティンガムも、出場機会と育成環境という点で魅力的な選択肢となる。どのクラブが彼を手にするか。その瞬間が、ブラジルから欧州への新たな物語の始まりになる。