マルク=アンドレ・テア・シュテーゲンの去就は、欧州サッカー界で最も注目を集めるテーマのひとつとなっている。スペイン紙『Sport』の報道によれば、マンチェスター・ユナイテッドとニューカッスル・ユナイテッドが、バルセロナの守護神獲得に向けて動きを見せている。
テア・シュテーゲンは2014年にボルシア・メンヒェングラートバッハからバルセロナに加入し、以降10年以上にわたりクラブのゴールを守り続けてきた。ラ・リーガ6度、コパ・デル・レイ6度、そして2015年のチャンピオンズリーグ制覇と、数々のタイトルを手にしてきた彼は、カンプ・ノウの象徴的存在である。
しかし、今季は背中の手術からの回復過程でクラブとの関係が微妙に揺らぎ、キャプテンマークを一時的に剥奪されるなど、これまでにない不安定な立場に置かれている。
さらに、バルセロナは夏にエスパニョールからジョアン・ガルシアを獲得し、加えて元ユヴェントスのヴォイチェフ・シュチェスニーも健在。ハンジ・フリック監督はガルシアを将来的な正守護神として据える方針を示しており、テア・シュテーゲンの出場機会は確実に減少する見通しだ。契約は2028年まで残っているが、クラブの財政難も相まって、放出の可能性は現実味を帯びている。
プレミアリーグ勢の思惑とテア・シュテーゲンの選択肢
最も積極的に動いているのはマンチェスター・ユナイテッドだ。アンドレ・オナナがトルコのトラブゾンスポルへローン移籍し、代わりに獲得した若手GKセネ・ラメンスはデビュー戦で好パフォーマンスを見せたものの、経験不足は否めない。クラブは欧州の舞台を欠いている今季、国内での安定を最優先に考えており、即戦力としてのテア・シュテーゲンを強く意識している。
一方、ニューカッスルも虎視眈々とチャンスを狙っている。ニック・ポープの不安定なパフォーマンスに加え、チャンピオンズリーグを戦う上での守備の安定性を求めるエディ・ハウ監督にとって、テア・シュテーゲンの存在は理想的。足元の技術に優れ、ハイライン戦術に適応できる彼は、ニューカッスルのスタイルに完璧にフィットする。
さらに、トッテナムやASモナコも関心を示しているとされ、移籍市場での競争は激化している。バルセロナはローン移籍に消極的で、完全移籍を基本線としているが、テア・シュテーゲン本人がどのような決断を下すかが最大の焦点だ。
彼にとって重要なのは、2026年ワールドカップに向けたドイツ代表での立場。マヌエル・ノイアーの後継者として長らく期待されながら、代表での序列は必ずしも安定していない。クラブでの出場機会を確保しなければ、代表での正守護神の座を確実にすることは難しい。プレミアリーグの舞台でレギュラーを掴むことは、彼のキャリアにおいて極めて大きな意味を持つ。
テア・シュテーゲンのプレースタイルとプレミア適応の可能性
テア・シュテーゲンの最大の強みは、冷静なショットストップ能力と足元の技術の高さ。バルセロナではビルドアップの起点として機能し、時にセンターバック顔負けのパス精度を披露してきた。プレミアリーグの激しいプレスに晒されても、彼の落ち着きと判断力は大きな武器となるだろう。
また、彼の反射神経とポジショニングは、狭いスペースでの決定機を阻止する場面で際立つ。特にニューカッスルのように守備ラインを高く設定するチームでは、背後のスペースをカバーできる守護神が不可欠であり、テア・シュテーゲンはその条件を満たしている。
一方で、プレミアリーグ特有のフィジカルな空中戦や、雨風の強い環境での試合にどこまで適応できるかは未知数だ。ラ・リーガとは異なる環境に身を置くことは、彼にとって大きな挑戦となる。
バルセロナに残留する選択肢も依然として存在する。クラブは彼を精神的支柱として高く評価しており、ベンチに置いてでもチームに残したいと考えている節がある。しかし、財政難を抱えるクラブにとって、高額年俸を支払い続けることはリスクでもある。
もし彼が移籍を決断すれば、それはクラブにとっても一つの転換点となる。ジョアン・ガルシアを中心とした新たな守備体制を築くことができ、財政的にも余裕が生まれる。一方で、長年クラブを支えてきた象徴を失うことは、サポーターにとって大きな痛手となるだろう。
個人的な見解
テア・シュテーゲンの去就は、バルセロナとプレミアリーグの勢力図を左右する大きなテーマだと感じている。
彼が残留すれば、バルセロナは経験豊富な守護神を引き続き抱えることになるが、出場機会の減少は避けられない。逆に移籍すれば、プレミアリーグのクラブにとっては守備の安定と国際的な注目を同時に手に入れることになる。
個人的には、彼がプレミアリーグに挑戦する姿を見たい。
特にニューカッスルであれば、チャンピオンズリーグの舞台で彼の存在感を最大限に発揮できるはずだ。マンチェスター・ユナイテッドも魅力的な選択肢だが、欧州の舞台を欠く今季の状況を考えると、テア・シュテーゲン自身がどこまで魅力を感じるかは疑問が残る。
いずれにせよ、2026年ワールドカップを見据える彼にとって、この冬の移籍市場はキャリアの分岐点となる。守護神としての誇りを胸に、どのクラブで新たな挑戦を選ぶのか。
