エヴァートンは冬の移籍市場に向けてカルヴィン・フィリップスの獲得を本格的に検討している。英『Football Insider』の報道によれば、マンチェスター・シティで出場機会を失っている29歳のイングランド代表MFに対し、エヴァートンがローン移籍を軸としたオファーを準備しているという。契約には買い取りオプションが付与される可能性が高く、クラブを率いるデイヴィッド・モイーズがこの動きを主導しているとされる。
フィリップスは2022年夏にリーズ・ユナイテッドからシティへ移籍したが、グアルディオラの下で定位置を確保することはできなかった。
2024年にはウェストハムへローン移籍したものの、わずか8試合の出場にとどまり、ニューカッスル戦での痛恨のPK献上やサポーターとの衝突など、キャリアの低迷を象徴する出来事が続いた。そして今季、カラバオカップで645日ぶりにシティの公式戦に出場したものの、依然として構想外のまま。
一方のエヴァートンは、今季プレミアリーグで7試合を終えて8位につけている。ジャック・グリーリッシュの加入によって攻撃面は活性化したが、中盤の守備的な安定感には課題が残る。イドリッサ・ゲイェやジェームズ・ガーナーが奮闘しているものの、長期的に戦い抜くには厚みが不足している。
そこで浮上したのが、リーズ時代に「ヨークシャーのピルロ」と称されたフィリップス。彼のボール奪取力と展開力は、モイーズの戦術において中盤の軸となり得る。
フィリップスの停滞とエヴァートンでの可能性
フィリップスのキャリアは、リーズ時代の輝きとシティ移籍後の停滞が鮮明に対比される。リーズではマルセロ・ビエルサの下で中盤の心臓として機能し、イングランド代表でもユーロ2020準優勝に貢献した。しかしシティでは、ロドリの存在に阻まれ、出場機会は激減。さらにローン先のウェストハムでも信頼を勝ち取れず、評価は急落した。
それでも、エヴァートンにとってはこの状況こそがチャンスだ。モイーズはフィリップスの特性を熟知しており、守備的中盤に安定感をもたらす存在として再生を図る可能性がある。特に今季のエヴァートンは、攻撃のタレントが揃いながらも守備的なバランスに課題を抱えている。フィリップスが本来の力を取り戻せば、チームの中盤は一気に引き締まり、トップ6争いに食い込む現実味が増す。
さらに、クラブの新オーナーであるThe Friedkin Groupは補強に積極的であり、財政的な後押しも期待できる。ローン移籍から完全移籍への移行も視野に入れた取引は、リスクを抑えつつ即戦力を確保できる理想的なシナリオだ。フィリップスにとっても、キャリア再生のラストチャンスとなる可能性が高い。
個人的な見解
カルヴィン・フィリップスのキャリアは、まるで急上昇から急降下へと転じたジェットコースターのようだ。リーズ時代にはプレミアリーグ屈指の守備的MFと称され、イングランド代表でも中盤の要として信頼を勝ち取った。
しかしシティ移籍後は、ロドリという絶対的存在の影に隠れ、出場機会を得られずに自信を失っていった。ウェストハムでのローンも失敗に終わり、選手としての評価は大きく下がった。だが、29歳という年齢はまだ十分に再起を果たせるタイミングだ。
エヴァートンは、彼にとって理想的な環境になり得る。モイーズの戦術は規律とハードワークを重視し、フィリップスの守備的能力を最大限に引き出す可能性がある。
さらに、グリーリッシュやデューズベリー=ホールといった攻撃的選手が躍動する今、中盤の底を支える存在は不可欠だ。
もしこの移籍が実現すれば、エヴァートンはトップ6を狙えるだけの現実味を帯びるだろう。個人的には、フィリップスが「忘れられた代表選手」から「復活の象徴」へと変貌する瞬間を見てみたい。
彼のキャリアは、失敗と挫折の連続に見えるかもしれない。しかし、サッカーの歴史は再生の物語に満ちている。
フィリップスがヒル・ディッキンソン・スタジアムで再び輝きを取り戻すことができれば、それは移籍市場の一幕を超え、選手としての誇りと情熱を取り戻す壮大な挑戦になるはずだ。
