ジョシュア・ザークツィーのキャリアは大きな岐路に立たされている。今夏、マンチェスター・ユナイテッドは攻撃陣を刷新するために総額2億ユーロを超える投資を行い、ブライアン・ムベウモ、マテウス・クーニャ、ベンヤミン・シェシュコといった新戦力を次々と獲得した。
その結果、ザークツィーは序列を大きく下げ、今季ここまでの出場時間はわずか82分。唯一の先発は8月のバーンリー戦に限られ、ゴールもアシストも記録できていない。
ルベン・アモリム監督の下でユナイテッドは前線の選択肢を豊富に抱えるが、その分ザークツィーの居場所はほとんど消えかけている。カラバオカップの早期敗退によりローテーションの機会も失われ、直近のサンダーランド戦ではベンチ入りすら逃した。
これは監督が彼を今季の構想から外しつつある明確なサインだ。『SciSports』のデータによれば、ザークツィーは依然としてユナイテッドの戦力評価で上位に位置しているが、現実にはピッチに立つ機会を得られないという深刻な矛盾を抱えている。
英『TeamTalk』によると、この状況を受け、エバートンとウェストハムが1月の移籍市場で動きを見せているようだ。両クラブともに前線の補強を急務としており、ザークツィーの獲得は戦術的にも理にかなう選択肢。
特にウェストハムは、ジャロッド・ボーウェンを中心とした攻撃に新たな軸を加えることを望んでおり、ポストプレーとリンクアップに優れるザークツィーは理想的な存在といえる。一方、エバートンは決定力不足に悩まされており、彼のように前線でボールを収めて二列目を活かせるタイプは、チームの攻撃を大きく変える可能性を秘めている。
さらに注目すべきは、プレミアリーグ以外の選択肢。ザークツィーは過去にボローニャで成功を収めており、イタリア復帰の可能性も報じられている。コモ、ユヴェントス、ミランといったクラブが関心を示しており、プレースタイル的にもセリエAのテンポに適応しやすいことは実証済み。ただし本人は「プレミアリーグで自分が通用することを証明したい」という強い意志を持っており、イングランド残留を優先する可能性が高い。
ウェストハムとエバートン、ザークツィーを巡る戦術的価値
ザークツィーの魅力は、単なるストライカーとしての得点力ではなく、前線での多様性にある。ボローニャ時代にはセリエAでその才能を開花させ、背後への抜け出しだけでなく、トップ下的な役割でのプレーも披露した。
身長193cmのフィジカルを活かしたポストプレーに加え、足元の技術と視野の広さで味方を活かすことができる。これは、カウンター主体のウェストハムにおいても、ポゼッションを重視する場面が増えているエバートンにおいても、戦術的な幅を広げる要素となる。
エバートンは今季もゴール前での精度不足に苦しんでおり、チャンスを作りながらも決定機を逃す試合が続いている。ザークツィーのように前線でボールを収め、二列目を活かせるタイプは、ベトとの共存も視野に入れられるだろう。ベトが空中戦で相手を引きつけ、ザークツィーが足元でタメを作る形は、エバートンの攻撃に新たなリズムをもたらすはず。
一方のウェストハムは、ザークツィーが加われば即戦力としてスタメンを奪う可能性も高い。『SciSports』も「ウェストハムではキープレーヤーになり得る」と分析しており、加入すればロンドン・スタジアムの攻撃の中心に据えられる可能性がある。ジャロッド・ボーウェンやルーカス・パケタとの連携は、プレミアリーグでも屈指の破壊力を持つ攻撃ユニットを形成するだろう。
さらに、ザークツィー自身にとっても2026年ワールドカップを見据えた決断が迫られている。オランダ代表での地位を確立するためには、クラブでの継続的な出場が不可欠だ。ユナイテッドでベンチを温め続けるよりも、プレミアリーグ中堅クラブで主力として活躍する方が、代表監督ロナルド・クーマンの視線を引き寄せるのは明らかだ。
個人的な見解
ザークツィーの移籍は「避けられない選択」に近いと感じている。ユナイテッドの現状を考えれば、彼が出場機会を得る可能性は極めて低く、キャリアの停滞を避けるためには新天地を選ぶしかない。
特にウェストハムは、彼のプレースタイルとクラブの戦術的ニーズが見事に噛み合っており、加入すれば即座に攻撃の軸となれるだろう。ロンドン・スタジアムの観客が、彼のポストプレーから生まれる新たな攻撃の形に熱狂する光景が目に浮かぶ。
一方で、エバートンでの挑戦も決して悪い選択ではない。ベトとの共存や、デイビッドモーイズの下でのフィジカルを前面に押し出す戦い方は、ザークツィーの成長を促す可能性がある。
ただし、クラブの不安定さを考えると、安定した環境でプレーしたい彼にとってはリスクも伴う。エバートンは残留争いに巻き込まれる可能性が常にあり、その中で自分の価値を証明するのは容易ではない。
最終的に、ザークツィーがどのクラブを選ぶにせよ、1月の移籍市場は彼のキャリアにおける大きな転機となる。オランダ代表入りを懸けた勝負の数カ月が、プレミアリーグの舞台でどのように展開されるのか。
