マンチェスター・ユナイテッドの補強戦略は明確に変化している。かつて報じられたバルセロナのラフィーニャ獲得計画は、現実的な優先順位から外れた。英『TEAMtalk』の報道によれば、ユナイテッドはラフィーニャに1億2000万ユーロ規模の投資を検討したが、最終的に中盤の再建を最優先に据える方針を固めた。
その背景には、すでに前線に大規模な投資を行った事実がある。ブライアン・ムベウモ、ベンヤミン・シェシュコ、マテウス・クーニャといった新戦力を迎え入れ、マーカス・ラッシュフォードやジェイドン・サンチョらを放出するなど、大胆な刷新を敢行した。攻撃陣の再編は一段落し、次なる課題は中盤の安定性と創造性の確保に移っている。
エリオット・アンダーソンとカルロス・バレバに向ける視線
ユナイテッドが注目するのは、ノッティンガム・フォレストで急成長を遂げたエリオット・アンダーソン、そしてブライトンのカメルーン代表カルロス・バレバだ。
アンダーソンは22歳にしてプレミアリーグ屈指の守備的MFへと飛躍し、ボール奪取と展開力を兼ね備えた存在として評価を高めている。ニューカッスルからフォレストへ移籍した2024年以降、その成長曲線は急上昇を描き、イングランド代表にも定着しつつある。彼のプレーは、将来有望株ではなく、ユナイテッドが求める「攻守両面での安定性」を鮮やかに映し出している。
一方のバレバは、21歳ながら圧倒的なフィジカルと推進力を誇り、ブライトンの中盤を支える屋台骨となっている。2025年夏の移籍市場ではユナイテッドが獲得に迫ったが、ブライトンが代役を確保できず交渉は決裂した。
しかし、クラブは2026年夏に向けて再び動く可能性が高いとされ、バレバ自身もステップアップを望んでいると伝えられている。ユナイテッドファンの38%が「冬の移籍市場で最優先に獲得すべき選手」としてバレバを支持している。
ラフィーニャ獲得見送りの意味とクラブの成熟
ラフィーニャは2025年現在もバルセロナで主力を担い、ブラジル代表でもカルロ・アンチェロッティ監督の下で重要な役割を果たしている。市場価値は9000万ユーロに達し、契約も2028年まで延長済み。ユナイテッドが彼を狙うには巨額の投資が必要だが、クラブは冷静に優先順位を見極めた。
過去のユナイテッドは、スター選手獲得に走りながらもチームバランスを崩し、結果的にタイトルから遠ざかってきた。今回の決断は、派手さよりも実効性を重視する姿勢の表れであり、クラブが補強戦略において成熟した段階に入ったことを如実に示している。
個人的な見解
今回のユナイテッドの補強方針は、クラブの未来を左右する分岐点になると考える。
ラフィーニャのようなスターを加えれば短期的な話題性は得られるが、真に必要なのは中盤の安定性と創造性だ。アンダーソンとバレバの同時獲得が実現すれば、ユナイテッドは攻守のバランスを取り戻し、プレミアリーグの覇権争いに再び名乗りを上げるだろう。
特にアンダーソンは、ニューカッスルから放出された悔しさを糧に成長を遂げた選手であり、彼の闘志と技術はユナイテッドの中盤に新たなエネルギーを注ぎ込むはずだ。
バレバもまた、カゼミーロの後継者として理想的な存在であり、彼の推進力はアモリムの戦術に完璧にフィットする。
ユナイテッドがこの二人を軸に中盤を再構築できれば、短期的な補強ではなく「チームの骨格を作り直す」ことになる。クラブがようやく正しい方向へ舵を切ったと感じる。
