チェルシーの守備陣は深刻な危機に直面している。レヴィ・コルウィルが長期離脱を余儀なくされ、ウェズレイ・フォファナやトシン・アダラビオヨもコンディション不良に苦しむ中、エンツォ・マレスカ監督は開幕から理想の布陣を組めずにいる。
そうした背景の中で、ノッティンガム・フォレストの23歳センターバック、ムリーロの名前が再び浮上している。英『Football Insider』によれば、チェルシーは1月の移籍市場で彼の獲得を最優先課題として検討しているという。昨シーズンから続く関心は衰えるどころか、むしろ負傷危機によって切迫度を増している。
ムリーロはブラジルのコリンチャンスからプレミアリーグに挑戦し、瞬く間に評価を高めた。空中戦の強さ、対人守備の粘り、そして後方からの冷静なビルドアップ能力は、フォレストの守備を支える柱となっている。特に今季は、プレミアリーグ全体でもトップクラスのデュエル勝率を記録しており、数字がその存在感を裏付けている。
ムリーロのプレースタイルとチェルシーへの適合性
ムリーロの特徴は、フィジカルの強さだけではない。ラインを高く保ちながらも、相手の裏抜けに素早く対応できるスピードを備えており、現代的センターバックに不可欠な機動力を持つ。また、左足から繰り出される縦パスは、攻撃のスイッチを入れる重要な役割を果たしている。
マレスカ監督が志向するのは、後方からの緻密なビルドアップを軸にした攻撃的サッカーだ。そのため、守備者には単に相手を止めるだけでなく、攻撃の第一歩を担う役割が求められる。
現状のチェルシーでは、コルウィル不在の影響が大きく、後方からの展開力が不足している。ムリーロが加われば、その穴を埋めるどころか、より多彩な攻撃パターンを生み出す可能性がある。
一方で、移籍実現には大きなハードルがある。ノッティンガム・フォレストは昨冬のオファーを拒否しており、評価額は7000万ポンド前後に達するとされる。財政的な負担は軽くなく、またリヴァプールやバルセロナも関心を寄せているため、競争は熾烈を極めるだろう。
プレミアリーグ全体におけるムリーロの価値
ムリーロの存在は、単にチェルシーの補強候補という枠を超えて、プレミアリーグ全体の勢力図に影響を与える可能性がある。リヴァプールはフィルジル・ファン・ダイクの後継者を模索しており、バルセロナは財政難を抱えながらも若手DFの補強を急務としている。もしチェルシーが先手を打てば、ライバルに大きな打撃を与えることになる。
さらに、ムリーロ自身にとってもキャリアの分岐点となる。フォレストでの経験は彼を成長させたが、欧州カップ戦の舞台で自らを試す機会は限られている。チェルシー移籍が実現すれば、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグでの経験を積み、真の世界的DFへと飛躍する可能性が広がる。
個人的な見解
ムリーロの獲得は、チェルシーにとって守備の再建だけでなく、クラブの未来を左右する投資になると考えている。
彼の年齢、能力、そして成長曲線を見れば、数年後にはプレミアリーグを代表するセンターバックに成長していても不思議ではない。
マレスカ監督の戦術においても、後方から試合を組み立てる役割を担える選手は不可欠であり、ムリーロはその条件を満たす数少ない存在になり得る。
ただし、資金面と競合クラブの存在は無視できない。リヴァプールやバルセロナが本格的に動けば、チェルシーは資金力だけでなく、プロジェクトの説得力を示す必要がある。
選手にとって「どのクラブで成長できるか」が決定打になる以上、チェルシーは未来像を明確に提示しなければならない。
個人的には、今のチェルシーが本気でタイトルを狙うのであれば、この冬の移籍市場でムリーロを確保することが不可欠だと感じる。守備の安定なくして攻撃の爆発力は生きない。
ムリーロがスタンフォード・ブリッジに立つ姿は、クラブの再生を象徴する一歩になるはずだ。
