マンチェスター・ユナイテッドの補強戦略において最も注目されているのが、インテル・ミラノのフェデリコ・ディマルコだ。
イタリア代表の左ウイングバックは、ここ数年でセリエAを代表する存在へと成長し、攻撃と守備の両面で圧倒的な存在感を放ってきた。イタリアメディア『Inter Live』の報道によれば、ルベン・アモリムがこの移籍計画の中心人物であり、ユナイテッドの戦術的進化を加速させるためにディマルコを強く求めている。
ディマルコはインテル下部組織出身で、レンタル移籍を繰り返しながら経験を積み、ついにクラブの主力に定着した。公式戦200試合近くに出場し、20得点37アシストという数字を残している。
特に左足から繰り出されるクロスとセットプレーは、インテルの攻撃を支える最大の武器となってきた。昨季のセリエAではクロス成功率がリーグトップクラスを記録し、守備面でも1対1の対応力と戦術理解度の高さで評価を高めている。
アモリムがユナイテッドで導入している3バックシステムにおいて、ウイングバックは攻撃の起点であり守備の要でもある。パトリック・ドルグがまだ適応途上にある現状を考えれば、経験豊富なディマルコの加入は即効性のある補強となる。
インテルの葛藤とユナイテッドの野心
インテルは当然ながらディマルコの流出を阻止したい。現行契約は年俸400万ユーロで残り2年。クラブは給与アップを含む延長交渉を進めているが、ユナイテッドの関心が交渉を難航させている。ディマルコ自身はミラノ生まれでクラブへの愛着も強いが、プレミアリーグ挑戦という新たな舞台は大きな誘惑だ。
ユナイテッドにとっても彼の加入は、アモリムが掲げる「縦に速く、幅を最大限に活かす」フットボールを完成させるための決定的なピースとなる。左サイドからの高精度クロスは、ユナイテッドの攻撃に新たな次元をもたらすだろう。さらに、インテルで培った3バックの経験は、アモリムの戦術に即座に適応できる要素となる。
ただし、移籍金の問題は避けられない。インテルは主力の流出を防ぐため、最低でも5000万ユーロ規模のオファーを要求するとみられる。ユナイテッドが財政的にどこまで踏み込めるかが、今後の焦点となる。
ディマルコのプレースタイルとユナイテッドへの適応
ディマルコの最大の武器は、左足の精度と戦術理解度の高さだ。クロスの質はもちろん、インテルでのプレーではビルドアップにも積極的に関与し、相手のプレスをいなす役割を担ってきた。
守備面では1対1の対応力に加え、ポジショニングの巧みさで相手の攻撃を封じる場面も多い。ユナイテッドに加入すれば、彼の攻撃参加はマテウス・クーニャら内側へのカットインを補完し、ホイルンドの空中戦を活かす形で得点機会を増やすだろう。
また、アモリムの戦術においては、ウイングバックが中盤に絞って数的優位を作る動きも求められる。ディマルコはその柔軟性を備えており、インテルでも中盤に顔を出してパス回しに加わる場面が多かった。ユナイテッドにとって、彼は攻撃と守備の両面で即戦力となる存在になり得る。
個人的な見解
フェデリコ・ディマルコのユナイテッド移籍は、戦術的にも象徴的にも即戦力になる。
アモリムが志向するダイナミックなフットボールを具現化する存在として、彼ほど適任な選手はいない。左足から繰り出されるクロスやFKは、オールド・トラッフォードの空気を一変させる可能性を秘めている。
一方で、インテルにとってディマルコはクラブの象徴的な存在であり、彼を失うことは戦術面だけでなく精神的なダメージも大きい。
ユナイテッドが本気で動くなら、クラブの方向性を左右する一大決断になるだろう。
個人的には、アモリムの強い意志とユナイテッドの補強ニーズを考えれば、来年1月の移籍市場で交渉が本格化する可能性は極めて高いと見ている。
さらに言えば、この移籍はプレミアリーグ全体に波及効果をもたらすだろう。ディマルコの加入によってユナイテッドが左サイドを強化すれば、ライバルクラブも対抗策を迫られる。
アモリムが描く戦術革命の成否は、ディマルコの獲得にかかっているといっても過言ではない。
