クリスタル・パレスはプレミアリーグで中位に踏みとどまりながらも、欧州の名門クラブから熱い視線を浴びる選手を複数抱えている。その象徴がコロンビア代表の右サイドバック、ダニエル・ムニョスだ。
2024年1月にヘンクから加入した彼は、攻守両面での安定感と推進力を武器に、わずか1年半でセルハースト・パークの主力に定着した。今季もすでにリーグ戦7試合に先発し、1得点1アシストを記録。守備面ではタックル成功率が70%を超え、攻撃面でもクロス精度の高さで存在感を放っている。
英『TeamTalk』によれば、バルセロナは右サイドの補強候補としてムニョスをリストアップしており、契約解除金は2500万ユーロと報じられている。
ジュール・クンデを本職ではない右サイドで起用してきたバルサにとって、攻守両面で計算できるムニョスは理想的な補強ターゲットだ。さらにアトレティコ・マドリードも関心を示しており、2026年夏の移籍市場で争奪戦が激化する可能性が高い。
一方で、クリスタル・パレスは2028年までの長期契約を結んでいるため、売却を急ぐ必要はない。スティーブ・パリッシュ会長は「クラブにとって重要な選手を安売りするつもりはない」と強調しており、過去にマイケル・オリーセやエベレチ・エゼを高額で売却した実績を踏まえれば、ムニョスにも同等以上の評価額を設定することは確実。
アダム・ウォートンとマルク・グエヒ、2026年に迫る岐路
ダニエル・ムニョスと並んで注目を集めるのが、21歳のイングランド代表MFアダム・ウォートンだ。2024年にブラックバーンから加入した彼は、わずか1年半でFAカップ制覇に貢献し、今季もレギュラーとして活躍を続ける。
中盤での冷静な配球と守備の切り替えの速さは、すでにプレミア屈指の評価を得ている。レアル・マドリー、マンチェスター・ユナイテッド、リヴァプール、バイエルン・ミュンヘンといった欧州の名門が獲得を狙っており、移籍金は7500万ポンド以上に達する可能性がある。
パリッシュ会長は「彼はチャンピオンズリーグでプレーしたいと考えているが、その舞台をパレスで実現できると信じている」と語り、契約延長と高額なリリース条項を検討しているという。
一方、マルク・グエヒの去就はさらに複雑だ。今夏、リヴァプール移籍が成立寸前で破談となり、すでにメディカルチェックまで終えていたと報じられている。クラブが土壇場で交渉を打ち切った背景には、欧州カップ戦を戦う上で主将を失うリスクを避けたかった事情があるとされる。
しかし、契約延長の兆しはなく、2026年夏にフリーで退団する可能性が極めて高い。リヴァプールは依然として獲得を狙っており、レアル・マドリーも関心を示している。グエヒ自身は「今季に集中し、来夏のワールドカップに最高の状態で臨みたい」と語っており、移籍の決断はシーズン終了後に持ち越される見通しだ。
個人的な見解
クリスタル・パレスが直面しているのは、クラブの成長を誇示する瞬間であると同時に、避けられない現実でもある。
セルハースト・パークはもはや「中堅クラブ」の枠を超え、欧州のトップクラブが本気で狙う人材を育て上げる舞台となった。
しかし、その才能を長期的に留めることは難しく、選手の野心とクラブの現実が交錯する局面が迫っている。
個人的に注目しているのは、やはりアダム・ウォートンの去就だ。彼が残ればパレスは中盤の安定を維持できるが、もし移籍となれば、その資金をどう再投資するかがクラブの未来を決定づける。
グエヒの退団は避けられない流れに見えるが、ムニョスのような選手を軸に新たなチームを築けるかどうかが、クラブの次なるステージを左右するだろう。
2026年は、クリスタル・パレスにとって移籍市場の一幕にとどまらず、クラブのアイデンティティを問う試金石となる。
そして、もしウォートンがワールドカップで輝きを放てば、彼の移籍金はさらに跳ね上がり、クラブにとって歴史的な取引となる可能性がある。
セルハースト・パークの未来は、選手たちの選択とクラブの決断が織りなすドラマの中で形作られていく。
