ロベルト・レヴァンドフスキの去就が再び欧州サッカー界を揺らしている。英『Daily Star』によれば、バルセロナとの契約が今季限りで満了を迎えるこのポーランド代表ストライカーに、マンチェスター・ユナイテッドが関心を寄せているという。
バルセロナのハンジ・フリック監督は、ハイプレスを基盤とする戦術を徹底しており、前線の選手に求められる運動量は膨大。レヴァンドフスキは今季もラ・リーガで得点を重ねているが、かつての爆発的な決定力や90分間を通じた強度は徐々に衰えを見せている。クラブとしても、次世代のストライカーを中心に据える準備を進めており、すでに後継者候補をリストアップしている。
マンチェスター・ユナイテッドにとっての意味
ユナイテッドがレヴァンドフスキを獲得する可能性は、いわゆる噂話にとどまらない。クラブはここ数年、ストライカーの不在に悩まされてきた。ベンヤミン・シェシュコへの期待は大きいが、一人に依存するのは危険。即戦力としてゴールを量産できる存在を求めるなら、レヴァンドフスキの経験と技術は大きな魅力と言える。
ただし、プレミアリーグの強度はラ・リーガ以上に苛烈である。来年には38歳になるストライカーが週2試合の過密日程をこなし、トップレベルで結果を残せるかは未知数。
ユナイテッドが本気で未来を築くなら、若手ストライカーの獲得を優先するのが自然だろう。実際、クラブは「メキシカン・ペドリ」と称される新星ジルベルト・モラにも関心を示しており、世代交代を意識した補強戦略を進めている。
レヴァンドフスキのキャリアと“幻の移籍”
レヴァンドフスキとユナイテッドの縁は、実は十数年前に遡る。ボルシア・ドルトムント時代、サー・アレックス・ファーガソンが熱心に獲得を望んだが、クラブの意向で実現には至らなかった。本人もBBCのインタビューで「当時、ユナイテッドに行くことを決めていた」と語っている。
その後、彼はバイエルン・ミュンヘンで欧州屈指のストライカーへと成長し、バルセロナでもリーガ制覇に貢献した。だが、オールド・トラフォードのピッチに立つ姿は、いまだ実現していない。
この“幻の移籍”が、キャリア終盤に再び浮上していること自体が、サッカーファンの心を掻き立てる。ユナイテッドにとっては、長年追い求めたストライカーを迎える最後のチャンスになるかもしれない。
バルセロナにとって、レヴァンドフスキの退団は戦術的な転換点となる。フリック監督は前線からの圧力を重視するが、レヴァンドフスキのプレースタイルはむしろポジショニングとフィニッシュワークに特化している。
若手のラミン・ヤマルがいまやチームの中心になり、他にの将来を嘱望される若手が台頭している中、クラブが新たなストライカーを据えるのは自然な流れだ。
さらに、財政面でもバルセロナは高額年俸を支払う余裕が限られている。レヴァンドフスキの退団は、クラブにとって世代交代と財政健全化を同時に進める好機となる。
個人的な見解
レヴァンドフスキとユナイテッドの関係は、サッカー史における“未完の物語”だ。
もし彼がドルトムント時代にオールド・トラフォードへ渡っていたら、プレミアリーグの歴史は大きく変わっていたかもしれない。その物語がキャリア終盤に再び動き出すというのは、サッカーの持つドラマ性を示す。
ただし、冷静に見ればユナイテッドが本当に必要としているのは未来を担うストライカーだ。レヴァンドフスキの加入は短期的な得点力強化にはなるが、クラブの長期的な再建には直結しない。むしろ、彼の存在が若手の成長を阻害するリスクもある。
それでも、経験豊富なストライカーがロッカールームにもたらす影響は計り知れない。レヴァンドフスキの姿勢や準備の仕方を間近で学ぶことは、何よりの財産になるだろう。
ユナイテッドがこの移籍に踏み切るかどうかは、クラブが「即効性」と「未来志向」のどちらを優先するかにかかっている。
いずれにせよ、この噂が現実となるか否かに関わらず、レヴァンドフスキとユナイテッドの物語は、サッカーファンにとって永遠に語り継がれるテーマであり続ける。
