エル・クラシコの熱狂が冷めやらぬ中、レアル・マドリードのヴィニシウス・ジュニオールがピッチ外で火花を散らしている。バルセロナ戦での途中交代に激怒し、シャビ・アロンソ監督との握手を拒否。ロッカールームへ直行する際には「俺が出て行く」と吐き捨てた。この一言は、単なる感情の爆発ではなく、クラブとの関係が限界に達した証拠と見て良いだろう。
契約は2027年まで残っているが、延長交渉は完全に停止している。ヴィニシウスは年俸2000万ユーロを要求しており、これはキリアン・エムバペの待遇を超える水準。クラブ側はロッカールームのバランスを崩すことを懸念し、交渉は膠着状態に陥っている。さらに、サウジアラビアからの巨額オファーも報じられているが、選手本人はヨーロッパでの競争を望んでいる。
アロンソ体制との摩擦と戦術的な不一致
ヴィニシウスの不満は、起用法に対する苛立ちに根ざしている。今季10試合の先発のうち、フル出場はわずか3試合。バルセロナ戦ではペドリとのマッチアップで推進力を見せたにもかかわらず、72分に交代を命じられた。その直後の振る舞いは、積み重なった不信の噴出だ。
アロンソ監督は試合後に「ヴィニは大きく貢献してくれた」と語りつつ、「交代については話し合う必要がある」とも述べている。このコメントは、関係修復の余地を残しながらも、現状の緊張感を裏付けるものだ。
戦術面でもズレが生じている。アロンソはエムバペを軸にした中央突破型の構造を好み、ヴィニシウスのようなサイドで自由に動くタイプには制約が多い。実際、ヴィニシウスは左サイドで孤立する場面が増え、ボールを持ってもサポートが遅れる傾向が見られる。彼の持ち味である縦への突破とカットインは、今季のマドリーでは十分に活かされていない。
リヴァプールが狙う“左の爆撃機”
そんな中、英『TBR Football』グレアム・ベイリー記者はリヴァプールがヴィニシウスの状況を把握しており、選手側もプレミアリーグ移籍に前向きだと報じている。
ユルゲン・クロップ退任後のアルネ・スロット体制において、攻撃陣の再編は急務。モハメド・サラーの将来的な退団や、今夏加入のアレクサンデル・イサクの不安定なパフォーマンスを考慮すれば、左ウイングにワールドクラスの補強は理にかなっている。
ヴィニシウスのプレースタイルは、リヴァプールのハイテンポなトランジションに完璧にフィットする。推進力、1対1の突破力、そしてビッグマッチでの勝負強さ。これらはアンフィールドの空気を震わせる要素だ。さらに、彼の年齢は25歳。プレミアリーグでの挑戦には最適なタイミングだ。
リヴァプールは過去にも南米出身のアタッカーを活かしてきた。ロベルト・フィルミーノ、ルイス・スアレス、ルイス・ディアス。ヴィニシウスはその系譜に新たなページを加える存在になり得る。彼のダイナミズムは、プレミアリーグの強度とスピードにおいても通用するだろう。
個人的な見解
ヴィニシウス・ジュニオールの現状は、契約問題という表面的な話ではなく、クラブとの信頼関係の崩壊が根底にある。
シャビ・アロンソの戦術は、エムバペを中心に据えた構造であり、ヴィニシウスの自由なプレーを制限する傾向がある。これが、彼のフラストレーションを加速させているのは明白だ。
リヴァプールへの移籍は、彼にとって再出発の場となり得る。プレミアリーグの強度とスピードは、彼の特性を最大限に引き出すはずだ。
もちろん、契約解除や移籍金の問題は簡単ではないが、2026年に向けて動き出す可能性は十分にある。
アンフィールドでヴィニシウスが躍動する姿を想像するだけで、胸が高鳴る。この移籍話は、今後の欧州サッカーの勢力図を塗り替える可能性すら秘めている。
