トッテナム・ホットスパーがクリスタル・パレスのフランス代表ストライカー、ジャン=フィリップ・マテタ獲得に向けて動きを加速させている。英『Football Insider』の最新報道によれば、クラブは冬の移籍市場で即戦力のストライカー補強を最優先課題に掲げており、その筆頭候補がマテタだ。
マテタは今季プレミアリーグで既に7得点を挙げ、パレスの攻撃を牽引している。契約は2027年まで残っているが、クラブは延長交渉を断念したとされ、来夏には放出の可能性が高まっている。移籍金はおよそ4000万ポンドと見込まれ、トッテナムにとっては現実的な投資額だ。
トッテナムがマテタに注目する背景には、前線の不安定さがある。ドミニク・ソランケは長期離脱中で、リシャルリソンはパフォーマンスに波があり、ランダル・コロ・ムアニの完全移籍も不透明。
こうした事情から、トーマス・フランク監督は「ゴールを保証できる存在」を強く求めている。マテタはその条件を満たす数少ない選手の一人だ。
プレースタイルとトッテナムへの適合性
マテタの魅力は、192センチを超える体格を生かした空中戦の強さと、ゴール前での冷静な決定力にある。昨季のデータでは空中戦勝率が60%近くに達し、クロスを多用するトッテナムの攻撃スタイルに完璧に噛み合う。さらに、シュート成功率はプレミア平均を上回り、限られたチャンスを確実に得点へと変換できる能力を備えている。
また、グラスナー監督の下で磨かれた守備意識も特筆すべき点。前線からのプレスに積極的で、相手のビルドアップを阻害する役割を担える。これはフランク監督が志向するハイプレス戦術に直結し、攻守両面でチームに貢献できる。
ただし課題も存在する。マテタは好調時には手がつけられないが、試合ごとのパフォーマンスに波がある。さらに、パレスが冬の移籍市場で主力を手放す可能性は低く、実際の獲得は来夏以降に持ち越される公算が大きい。
ロンドンを巡る移籍戦線の行方
マテタを巡る争奪戦はトッテナムだけではない。マンチェスター・ユナイテッドやニューカッスルも関心を示しており、来夏には熾烈な競争が予想される。
一方で、トッテナムには他クラブにない強みがある。今季はチャンピオンズリーグにも出場し、プレミアリーグでも上位を維持。攻撃的なスタイルと安定した戦績は、選手にとって魅力的な移籍先となる。マテタ自身も「欧州の舞台で戦いたい」という意欲を持っており、トッテナムはその希望を満たせる数少ないクラブ。
個人的な見解
マテタのトッテナム移籍は、クラブの補強戦略において極めて現実的な補強だと考える。
プレミアでの実績、年齢的な成熟度、そして即戦力性を兼ね備えた彼は、ソランケやリシャルリソンに代わる「軸」として計算できる存在。特に、ゴール前での冷静さと空中戦の強さは、トッテナムが長年求めてきた資質そのものだ。
ただし、マテタが「決定的な答え」になるかは未知数。彼は優れたストライカーである一方、クラブをタイトル争いに押し上げるほどの絶対的存在かと問われれば、まだ疑問が残る。
むしろ、マテタを獲得した上で、異なるタイプのアタッカーを加えることで攻撃の多様性を確保する方が現実的だろう。
結論として、マテタはトッテナムにとって必要なピースではあるが「十分な答え」ではない。しかし、彼がホワイト・ハート・レーンのピッチでゴールを決め、サポーターの歓声を浴びる姿を想像すると、その可能性に賭ける価値は十分にある。
