マルセイユの背番号10が、再びプレミアリーグの舞台に立つ日は近いのかもしれない。メイソン・グリーンウッド。かつてマンチェスター・ユナイテッドで将来を嘱望された逸材は、フランスでの復活劇を経て、今トッテナム・ホットスパーの補強リストに名を連ねている。
だがこの移籍話は、クラブの姿勢、ファンの感情、そして選手自身の再生物語が交錯する、極めて繊細なテーマを孕んでいる。
英『TEAMtalk』の報道によれば、トッテナムはグリーンウッドの獲得に本格的な関心を示しており、攻撃陣のさらなる活性化を狙っているという。一方で、バルセロナやウェストハムもこの24歳のウィンガーに注目しており、争奪戦は激化の様相を呈している。しかし、最大の障壁はマルセイユとの契約と、過去のスキャンダルによる世間の目だ。
マルセイユでの復活と現在の評価
2024年夏、グリーンウッドはマンチェスター・ユナイテッドからマルセイユへ移籍。移籍金は約2500万ユーロとされ、契約は2029年までと長期にわたる。
フランスでの初年度、彼は公式戦34試合で21得点を記録し、リーグ・アンでもトップクラスの得点力を誇った。両足を自在に使い、右ウイングからのカットインと鋭いシュートは、かつての輝きを取り戻したかのような印象を与える。
今季も好調を維持しており、全大会通算13試合8得点4アシストという数字を残している。『Transfermarkt』による市場価値は4000万ユーロに達しており、これはマルセイユにとっても大きな資産。クラブ側はオファー次第では売却を検討する姿勢を見せているが、フランスでの成功と安定した環境を捨ててまで移籍するかは、本人の意志次第だ。
トッテナムがグリーンウッドに惹かれる理由
トーマス・フランク率いるトッテナムは、今季攻撃陣の刷新を進めており、モハメド・クドゥス、リシャルリソン、ブレナン・ジョンソンらに加え、さらなる突破力と得点力を持つ選手を求めている。グリーンウッドのように、個人で局面を打開できるウィンガーは、フランク監督にとっても重宝する。
また、グリーンウッドはまだ24歳と若く、プレミアリーグでの経験も豊富。ユナイテッド時代には83試合22得点を記録しており、イングランド代表にも一度選出された実績がある。
ただし、代表復帰の道は依然として険しく、現在の活動でも選考対象にすら入っていない。その背景には過去のDV疑惑による逮捕歴があり、クラブが獲得に踏み切るには、世論との向き合い方が問われる。
個人的な見解
グリーンウッドのトッテナム移籍は、クラブの価値観と覚悟が試される選択になる。ピッチ上の能力だけを見れば、彼は間違いなくプレミアリーグ上位クラブにふさわしいタレントだ。
だが、過去の問題が完全に払拭されたわけではなく、ファンやスポンサーの反応も慎重に見極める必要がある。
個人的には、フランスでの復活劇を経て、彼が再びイングランドの舞台で輝く姿を見たいと思う。サッカーは再生の物語に満ちている。
グリーンウッドがその一例となるなら、トッテナムという舞台は十分に魅力的。だが、クラブがこの移籍に踏み切るならば、選手の人間性と社会的責任にまで目を向けた、誠実な対応が求められる。
それができるなら、グリーンウッドのプレミア復帰は、サッカー界にとっても意義深い一歩となるはずだ。
