マンチェスター・ユナイテッドは来夏の移籍市場に向けて中盤の補強を最重要課題に掲げている。その中心に据えられているのが、VfBシュトゥットガルトの守備的MF、アンジェロ・スティラーだ。
ファブリツィオ・ロマーノが伝えたように、ユナイテッドは5300万ポンド規模の投資を検討しており、ルベン・アモリムのシステムに完璧にフィットする人材としてスティラーをリストの最上位に置いている。
スティラーはバイエルン・ミュンヘンで芽が出なかったものの、ホッフェンハイムでの飛躍を経て2023年にシュトゥットガルトへ加入。以降、ブンデスリーガで安定感抜群のパフォーマンスを披露し、24歳にして中盤の支配者としての評価を確立した。
彼の強みは、ボール保持時の冷静さ、縦パスを通す視野の広さ、そして守備局面での位置取りの巧みさにある。まさに現代的なアンカーとして、攻守両面でチームを支える存在。
ユナイテッドは今夏、マテウス・クーニャ、ブライアン・ムベウモ、ベンヤミン・シェシュコら攻撃陣に2億ポンド以上を投じたが、中盤の補強は後回しにされた。
その結果、カゼミーロの衰えやブルーノ・フェルナンデスの負担増が顕在化し、アモリムの戦術における「心臓部」の欠如が浮き彫りとなっている。スティラーはその空白を埋める存在として、クラブの未来を左右するキーパーソンになり得る。
ブンデスリーガ勢との競争とユナイテッドの課題
ただし、ユナイテッドの前に立ちはだかるのはブンデスリーガのライバルたちだ。複数のドイツ国内クラブがスティラーの動向を注目しており、母国での継続的な成長を望む選択肢も彼にとっては魅力的だ。特に、欧州カップ戦常連のクラブが動けば、ユナイテッドは資金力だけでなくプロジェクトの説得力を示さなければならない。
ロマーノも「現時点で具体的な交渉は進んでいないが、複数のブンデスクラブが追跡している」と指摘している。ユナイテッドが本気で獲得を実現するには、資金提示だけではなく、アモリムの下でどのように進化できるかという明確なビジョンを提示する必要がある。
さらに、ユナイテッド内部でも課題は山積している。クリスティアン・エリクセンが2024/25シーズン終了後に退団したことで、中盤の創造性は大きく低下。カゼミーロは年齢的に全盛期を過ぎ、メイヌーは才能豊かだが経験不足。
マヌエル・ウガルテは期待されたほどの存在感を示せていない。こうした背景からも、スティラーの加入は単なる補強ではなく、チームの骨格を再構築するための必須条件となっている。
個人的な見解
攻撃陣は既に刷新され、前線の破壊力はプレミアリーグでも屈指の水準に達した。しかし、その力を最大限に引き出すには、後方で安定してボールを供給し、試合のリズムを整える中盤の舵取り役が不可欠。
スティラーはその役割を担える数少ない人材であり、彼の加入はチーム全体のバランスを劇的に改善するだろう。
一方で、ブンデスリーガのクラブが提示する「母国での継続的な成長」という選択肢も現実的だ。ユナイテッドが本当に彼を引き寄せたいのであれば、資金力だけではなく、アモリムの下でどのように進化できるかという明確な青写真を示す必要がある。
5300万ポンドという投資は決して小さくないが、それ以上の価値をもたらす可能性を秘めている。スティラーの決断は、ユナイテッドの未来を大きく左右する分岐点になるだろう。