フェネルバフチェの中盤を支配する存在として名を轟かせているのが、イスマイル・ユクセクだ。26歳の守備的ミッドフィールダーは、ドメニコ・テデスコ監督の下で飛躍的な成長を遂げ、トルコ代表でも欠かせない存在となっている。彼のプレーは、ボール奪取にとどまらず、試合全体のリズムを操る力を備えており、まさにチームの心臓部と呼ぶにふさわしい。
ユクセクは今季スュペル・リグで9試合に出場し、ヨーロッパリーグや国内カップ戦を含めるとすでに公式戦13試合に出場している。代表では28キャップを積み重ね、トルコ代表の中盤においても不可欠な存在だ。市場価値は1100万ユーロとされているが、欧州のスカウトが注目する理由を考えれば、その評価は実際の影響力に比べて控えめに映る。
10月に行われたベシクタシュとのダービーでは、ユクセクは相手の攻撃を封じ込めるだけでなく、攻撃の起点としても機能した。
トルコ紙『Türkiye Gazetesi』の報道によれば、この試合にはブライトンとシュトゥットガルトのスカウトが訪れ、彼のプレーを細かくチェックしたという。ベシクタシュもユクセク獲得に動き、1000万ユーロのオファーを提示したがフェネルバフチェが拒否したとされる。
守備的MFとしての価値と欧州からの評価
ユクセクの最大の強みは、相手の攻撃を未然に断ち切るインターセプト能力。183cmの体格を活かした空中戦の強さに加え、相手の動きを先読みする鋭さは、欧州のスカウトが注目する理由のひとつとなっている。さらに、ボール奪取後の展開力も向上しており、縦への速いパスで攻撃のスイッチを入れる場面が増えている。
テデスコの戦術において、ユクセクは中盤の「盾」であると同時に「起点」でもある。彼がボールを奪い、素早く前線へと供給することで、フェネルバフチェの攻撃は一気に加速する。
これは、プレミアリーグのクラブが求めるダイナミズムそのものであり、ブライトンが彼に強い関心を抱くのも理解できる。シュトゥットガルトにとっても、ブンデスリーガの激しい攻防に適応できる選手として理想的な補強候補だ。
一方で、フェネルバフチェにとってユクセクはクラブの象徴的存在になりつつある。彼を中心に据えた中盤の構築は、国内リーグ制覇だけでなく、欧州カップ戦での躍進を狙う上でも不可欠だ。クラブが売却を拒むのは、経済的な判断にとどまらず、チームの未来を左右する戦略的な決断である。
データが示すユクセクの存在感
今季のスュペル・リグにおける1試合平均のタックル成功数は2.8回、インターセプトは2.1回と、リーグでもトップクラスの数値を記録している。さらに、パス成功率は**87%**を誇り、守備的MFとしては異例の安定感を示している。これにより、守備だけでなく攻撃の第一歩を担う存在としても評価が高まっている。
また、代表戦でもその存在感は際立つ。トルコ代表の中盤において、ユクセクは相手の攻撃を封じ込めるだけでなく、攻撃のリズムを整える役割を果たしている。特に欧州予選の試合では、強豪相手に冷静なプレーを見せ、チームを支える姿が印象的だった。
フェネルバフチェはユクセクに対して、売却不可の姿勢を明確にしている。欧州クラブからの関心が高まる一方で、クラブは彼を中核に据えたチーム作りを優先しており、少なくとも2026年夏までは移籍の可能性が低いと見られている。
だが、もしフェネルバフチェが欧州カップ戦で結果を残せなければ、ユクセク自身が新たな挑戦を望む可能性もある。逆に、チームが成功を収めれば、彼はフェネルバフチェの象徴としてさらに輝きを増すだろう。
個人的な見解
イスマイル・ユクセクのキャリアは、逆境を乗り越えた選手の強さを体現している。モウリーニョ政権下で出場機会を失い、キャリアの停滞すら危惧された時期もあったが、テデスコの下で再び主力に返り咲いた。
彼のプレーには、守備的MFとしての役割を超えたリーダーシップと精神的な支柱としての存在感がある。
今後を見据えると、ユクセクが欧州のトップリーグに挑戦する未来は十分に考えられる。特にプレミアリーグのクラブにとって、彼のような「戦える中盤」は喉から手が出るほど欲しい人材。
しかし、フェネルバフチェが欧州の舞台で真の強豪として認められるためには、ユクセクの存在が欠かせない。クラブが彼を手放さない姿勢は極めて合理的であり、少なくとも数年はイスタンブールでその闘志を燃やし続けるべきだと考える。
ユクセクの未来は、トルコ国内にとどまらず、欧州のトップレベルで輝く可能性を秘めている。フェネルバフチェの象徴として、そしてトルコ代表の中盤を支える存在として、ユクセクの歩みはこれからも注目され続けるだろう。