フラムがウォルヴァーハンプトンを3-0で下した試合は、勝利以上の意味を持っていた。英『Football Insider』によると、そのスタンドにはリバプールのチーフスカウト、バリー・ハンターの姿があった。
彼の視線の先にいたのは、夏の移籍市場でシャフタール・ドネツクからクラブ史上最高額の3460万ポンドで加入した22歳のブラジル人ウインガー、ケヴィンだった。
ケヴィンはこの試合でプレミアリーグ初先発を果たし、5度のドリブル成功を記録。相手守備陣を切り裂く推進力と、左サイドから中央へ切れ込む鋭さで観客を沸かせた。今季のプレミアリーグではここまで7試合に出場。数字だけを見れば控えめだが、実際のプレーは統計以上にインパクトがある。
フラムは契約を2030年まで結んでおり、『Transfermarkt』による市場価値は3000万ユーロ。クラブにとって将来の軸となる存在だが、リバプールの関心は確実に高まっている。アルネ・スロット監督の下で攻撃の幅を広げるため、クラブはケヴィンを長期的な投資対象として見ていると報じられている。
セメニョとの比較に見るリバプールの補強戦略
一方で、リバプールはボーンマスのガーナ代表アントワーヌ・セメンヨにも注目している。25歳のセメニョは今季プレミアリーグで開幕から9試合で6ゴール3アシストを記録し、チームを上位に押し上げる原動力となっている。彼は夏に2030年までの新契約を結んだが、契約には7500万ポンド前後のリリース条項が含まれていると複数の報道が伝えている。
セメニョは右サイドを主戦場とし、モハメド・サラーの後継候補としてリバプールがリストアップしている存在だ。爆発的な得点力とプレミアリーグでの実績は即戦力として申し分ないが、移籍金の高さとボーンマスの強硬姿勢が障壁となる。
一方でケヴィンはまだプレミアでの経験が浅いものの、シャフタール時代には公式戦32試合で9ゴールを挙げており、潜在能力の高さは証明済み。
リバプールがこの二人を同時に追跡しているのは、クラブの補強戦略を如実に示している。即戦力を求めるのか、それとも未来を見据えた投資を優先するのか。サラーの去就問題も絡み、クラブの決断は今後数か月で大きな意味を持つことになる。
個人的な見解
リバプールがケヴィンに注目するのは、単なる若手発掘ではなく、クラブの未来を形作るための布石だと感じる。
サラーが33歳を迎え、全盛期の終わりが見え始めている中で、次世代のウイングを確保することは避けられない課題となっている。
ケヴィンはまだ粗削りだが、プレーの中にブラジル人特有の創造性と大胆さがあり、アンフィールドの観客を熱狂させる資質を持っている。
一方で、セメニョのように既にプレミアで結果を残している選手を獲得するのは、即効性を求めるクラブにとって魅力的。
しかし、移籍金の高さやボーンマスの強硬姿勢を考えれば、現実的にはケヴィンの方が手を伸ばしやすいターゲットになる可能性がある。リバプールがどちらに舵を切るかは、今後のチーム状況とサラーの去就に大きく左右されるだろう。
私自身は、ケヴィンのような未完成の原石を磨き上げるリバプールの姿を見たい。ユルゲン・クロップ時代から続く「育成と進化」の哲学を継承するならば、ケヴィンの獲得は理想的なターゲットとなる。
彼がアンフィールドの赤いユニフォームに袖を通す日が来れば、その瞬間こそリバプールの未来が大きく動き出す合図になるはずだ。
