ロッテルダムのデ・カイプで行われたエールディビジ第10節は、イスマエル・サイバリの名を欧州中に轟かせる舞台となった。モロッコ代表MFはフェイエノールト相手に圧巻のハットトリックを決め、PSVを3-2の勝利へと導いた。この勝利により、PSVは勝ち点25でフェイエノールトに並び、熾烈な優勝争いの中心に立った。
サイバリのゴールは30分、51分、そして60分に生まれた。最初の得点はマウロ・ジュニオールのスルーパスを受け、冷静にアウトサイドで流し込む技ありの一撃。2点目はグース・ティルとのワンツーから豪快に叩き込み、再びリードを奪った。そして極めつけは、GKティモン・ヴェレンロイターの頭上を越えるループシュート。技術、冷静さ、創造性、そのすべてを凝縮した90分間だった。
この試合には、アストン・ヴィラ、ウェストハム、エヴァートン、フラム、ブライトン、リーズ・ユナイテッドといったプレミアリーグの複数クラブのスカウトが集結していたと英『TBR Football』が伝えている。
彼らの目の前で繰り広げられたパフォーマンスは、サイバリの市場価値を一気に押し上げるものとなった。『Transfermarkt』による推定市場価値は2700万ユーロだが、契約は2029年6月まで残されており、実際の移籍金は4000万ユーロを超える可能性が高い。
プレミアリーグが求める中盤の万能性とサイバリの適性
サイバリは24歳にして、中盤のあらゆる役割をこなせる稀有な存在。守備では高い位置からのプレスで相手のビルドアップを寸断し、攻撃では推進力と視野の広さを活かして前線に厚みを加える。フェイエノールト戦での3得点は、彼が得点者であると同時に試合全体を支配する力を持つことを証明した。
今季のサイバリは既に公式戦15試合で10得点を記録しており、得点力と安定感を兼ね備えた中盤の核として存在感を放っている。ピーター・ボス監督も『beIN SPORTS』の取材で「特別な選手」と称賛しており、クラブ内での評価も急上昇中だ。
プレミアリーグの中堅クラブが求めるのは、攻守両面で存在感を発揮できる中盤の駒。アストン・ヴィラのウナイ・エメリが構築する戦術的に柔軟なシステムや、ブライトンのファビアン・ヒュルツェラーが志向するポゼッションサッカーにおいて、サイバリのユーティリティ性は極めて魅力的に映る。さらに、彼のフィジカル強度と運動量は、イングランド特有の激しい試合展開にも十分適応できる資質を示している。
モロッコ代表としても、サイバリは既に17キャップ5ゴールを記録している。カタールW杯で旋風を巻き起こしたモロッコ代表の中盤においても、彼は新たな世代の中心選手として期待されている。アムラバトやウナヒといった先輩たちが築いた土台の上で、サイバリは攻撃的な厚みを加える存在として進化を続けている。
さらに注目すべきは、彼のプレーが持つ「試合を決定づける力」だ。単にボールを捌くだけでなく、ゴール前に飛び込み、試合の流れを変える一撃を放つ。これはプレミアリーグの激しいトランジションに直結する能力であり、移籍後も即戦力として機能する可能性が高い。
個人的な見解
イスマエル・サイバリのプレーを見ていると、彼がオランダ国内に収まる選手ではないことがはっきりと分かる。
中盤の底から前線まで自在に顔を出し、試合のリズムを変える力を持つ選手は、プレミアリーグでも数えるほどしかいない。彼のように得点力と創造性を兼ね備えたMFは、クラブの戦術を一段階引き上げる存在になり得る。
個人的には、サイバリがプレミアに渡るのは時間の問題だと感じている。特にブライトンやアストン・ヴィラのように、戦術的に柔軟で若手育成に積極的なクラブであれば、彼のポテンシャルを最大限に引き出せるだろう。
PSVにとっては大きな痛手になるが、欧州の舞台でさらに輝きを増す彼の姿を見たいという気持ちも抑えられない。
