2025年夏、リールで4シーズン連続二桁得点を記録したジョナサン・デイヴィッドが、フリートランスファーでユヴェントスに加入した。契約は2030年までの長期に及び、クラブは新たな得点源として大きな期待を寄せていた。しかし、シーズンが始まってわずか数か月、彼の未来は早くも不透明になりつつある。
セリエAではここまで9試合に出場し、先発は5試合、途中出場が4試合。記録したゴールはわずか1点にとどまっている。チャンピオンズリーグでも3試合に出場したが、得点はなく、存在感を示し切れていない。カナダ代表では依然として主力であり、CONCACAFゴールドカップでは4試合で2得点1アシストを記録しているが、クラブでのパフォーマンスは期待値を下回っている。
イゴール・トゥドール前監督は3-4-2-1を基本布陣とし、デイヴィッドを最前線に据える構想を描いていた。しかし、実際にはケナン・ユルディスやドゥシャン・ヴラホヴィッチとの共存が難しく、攻撃のバランスを崩す場面が目立つ。さらに、クラブはヴィクター・オシムヘンやランダル・コロ・ムアニといったストライカーの獲得にも動いており、デイヴィッドの立場は安泰とは言い難い。
しかし、ルチアーノ・スパレッティ新監督が誕生したことで、待遇に変化が生まれる可能性もある。まだまだ始まったばかりの新体制だけに、ユヴェントスがどのように変わるかは未知数で、今後数ヶ月にわたって見定める必要性がありそうだ。
トッテナムとバイエルンが狙う理由
海外メディア『Sky Sport Switzerland』によれば、ユヴェントスはすでにデイヴィッドを売却候補に挙げており、トッテナムとバイエルンが具体的な関心を示している。両クラブはすでに代理人サイドと接触し、移籍条件を確認しているという。
トッテナムにとって、デイヴィッドはソン・フンミン退団後の空白を埋める存在として理想的。トーマス・フランク監督の下で攻撃的なサッカーを展開するスパーズは、前線に流動性と決定力を兼ね備えた選手を求めている。デヤン・クルセフスキらとの連携を考えれば、デイヴィッドのスピードと両足を使える柔軟性は大きな武器になる。
一方、バイエルンはケインの後継者探しを進める中でデイヴィッドをリストアップしている。ケインが30代に突入した今、次世代のストライカーを確保することは急務だ。デイヴィッドはセカンドストライカーやトップ下でも機能できるため、バイエルンの多彩な攻撃オプションに厚みを加える存在となる。
デイヴィッドのプレースタイルと課題
デイヴィッドは裏への抜け出しとゴール前での冷静なフィニッシュが持ち味。リール時代にはリーグ・アンで毎シーズン二桁得点を記録し、2020-21シーズンにはパリ・サンジェルマンを抑えて優勝を果たした。両足を自在に使えるため、守備側にとっては予測困難な脅威となる。
しかし、セリエAではその強みが十分に発揮されていない。イタリアの守備はスペースを与えず、フィジカルコンタクトも激しい。デイヴィッドはスピードと機動力を活かす場面を作り切れず、ゴール前で孤立するシーンが目立つ。さらに、ヴラホヴィッチとの役割分担が曖昧で、連携不足が攻撃の停滞を招いている。
ユヴェントスがデイヴィッドを放出候補に挙げた背景には、財政的な事情もある。クラブは近年の財務問題から高額年俸選手の整理を進めており、フリートランスファーで獲得したデイヴィッドを売却すれば、純粋な利益を得られる。代理人手数料として1200万ユーロを支払っているものの、移籍金が発生しなかったため、売却益はそのままクラブの収益となる。
1月の移籍市場では、トッテナムとバイエルンに加え、プレミアリーグ中堅クラブやブンデスリーガの複数クラブも関心を寄せる可能性がある。特に、得点力不足に悩むマンチェスター・ユナイテッドやライプツィヒが動く可能性も取り沙汰されている。
個人的な見解
ジョナサン・デイヴィッドのキャリアは今まさに分岐点に立っている。リールでの成功は疑いようがなく、カナダ代表でも歴代屈指のストライカーとして地位を築いた。
しかし、ユヴェントスでの数か月は、彼のプレースタイルとセリエAの戦術的環境が必ずしも噛み合わないことを浮き彫りにした。
個人的には、彼にとってプレミアリーグへの挑戦が最も自然なステップだと感じている。トッテナムであれば、ジェームズ・マディソンといった選手と組み、スピードと柔軟性を活かした攻撃を展開できるだろう。
一方で、バイエルンのような完成度の高いチームでプレーすることは、彼の決定力をさらに磨く環境になる。
いずれにせよ、2026年のワールドカップ北中米大会を控えるカナダ代表にとっても、デイヴィッドのクラブ選びは極めて重要だ。
彼がどの舞台でゴールを重ねるのか、その選択は代表チームの未来にも直結する。ユヴェントスでの短い時間が失望に終わったとしても、まだ25歳。これからの5年が、彼を真のワールドクラスへ押し上げるかどうかを決定づけるだろう。
