ロンドン・スタジアムに漂う緊張感は、今季のウエストハム・ユナイテッドの苦境を象徴している。開幕からわずか2勝しか挙げられず、降格圏に沈むチームは、すでに21失点を喫してリーグワースト2位の守備記録を抱えている。
クラブはグレアム・ポッターを解任し、ヌーノ・エスピリト・サントを新監督に迎えたが、守備の脆さは依然として深刻だ。その再建の切り札として浮上しているのが、セルタ・デ・ビーゴのスペイン代表DFオスカル・ミンゲサであるとスペイン紙『Fichajes』が伝えた。
オスカル・ミンゲサのキャリアと現在地
オスカル・ミンゲサはバルセロナのカンテラ出身で、2020年にトップチームデビューを果たした。センターバックと右サイドバックをこなす柔軟性を持ち、特にビルドアップ能力に優れる点が評価されてきた。セルタに移籍した2022年以降は、守備の柱として安定したパフォーマンスを披露し、ラ・リーガで確固たる地位を築いている。
2025年11月現在、彼の市場価値は1700万ポンド前後と報じられており、契約は来夏まで。セルタは延長交渉を試みているが、本人は新たな挑戦を望んでいるとされる。ウエストハムはこの状況を最大限に利用し、1月の移籍市場で獲得を狙っている。
今季のウエストハムは、守備の不安定さが成績不振の最大要因となっている。21失点はリーグで下から2番目の数字であり、特にサイドからの崩壊が目立つ。右サイドバックのポジションは固定できず、センターバック陣も負傷や不調で安定感を欠いている。
ヌーノ監督は就任直後から守備の再構築を最優先課題に掲げており、ミンゲサの獲得はその戦略の中心に位置づけられている。彼の持つユーティリティ性は、4バックでも3バックでも機能するため、戦術的な柔軟性を高める効果が期待される。
ミンゲサのプレースタイルとプレミア適応の可能性
ミンゲサは1対1の守備対応に強く、相手の動きを読み切るインテリジェンスを備えている。さらに、後方からのビルドアップにおいて縦パスを通す能力は、プレミアリーグの激しいプレスを回避する上で大きな武器となる。
ただし、課題も存在する。ラ・リーガと比べてプレミアリーグは空中戦とフィジカルコンタクトの強度が格段に高い。ミンゲサがその環境にどこまで適応できるかは未知数だ。とはいえ、彼の冷静な判断力と戦術理解度は、時間をかければ十分に通用する可能性を示している。
セルタは契約満了を前に、来夏にフリーで失うリスクを避けたい考えだ。報道によれば、移籍金は1700万ポンド前後が目安とされているが、ウエストハムは交渉次第でより低い金額での獲得を狙っている。クラブの財政状況を考えれば、守備の即戦力を確保するために多少の投資は避けられない。
個人的な見解
オスカル・ミンゲサの獲得は、ウエストハムにとって守備再建の核心を担う戦力になると考える。
守備ラインの安定感が増すだけでなく、後方からの組み立てに新たな選択肢が生まれる。特にヌーノの戦術においては、サイドバックが中盤に絞る動きが重要であり、ミンゲサはその役割を自然にこなせる数少ない人材だ。
一方で、彼の適応には時間が必要だろう。プレミアリーグの強度に慣れるまでの数カ月は、失点リスクを抱えながらの戦いになる可能性が高い。しかし、長期的に見れば、彼の存在はクラブの守備文化を変える契機となり得る。
この移籍が成立すれば、ウエストハムが残留争いから抜け出すための大きな転機になると確信している。
セルタで主力として成熟したミンゲサが、プレミアリーグという新たな舞台でどこまで輝けるか。その挑戦は、彼自身のキャリアを押し上げるだけでなく、クラブの未来をも左右するだろう。
