アンス・ファティのキャリアは再び大きな岐路に立たされている。かつて「バルセロナの未来」と呼ばれた23歳のスペイン代表FWは、膝の大怪我と度重なる離脱によってキャリアの軌道を狂わされ、ブライトンでのローン移籍も不発に終わった。
昨シーズンはバルセロナに復帰したものの、出場時間はわずか1298分にとどまり、16歳の新鋭トニ・フェルナンデスよりも序列が下と報じられるほど、チーム内での立場は厳しいものとなっている。
この現実は、ファティがバルセロナで再び主力に返り咲く可能性が極めて低いことを示している。ハンジ・フリック監督は彼に十分な出場機会を与える考えを持っておらず、本人も代理人ジョルジュ・メンデスとともに新天地を模索している。
夏の移籍市場ではASモナコが強い関心を示し、買い取りオプション付きレンタルで加入が実現。フランスではかつての輝きを取り戻し、10試合で6ゴールを記録。スタメンの座を確固たるものにしているわけではないが、これまでの数シーズンに比べると復活の兆しを感じさせる。
一方で、プレミアリーグの複数クラブがファティの動向に注目している。特にアストン・ヴィラは、攻撃の多様性を求めて彼をリストアップしているとスペインメディア『Fichajes』が報じている。オリー・ワトキンスに依存する得点力の偏りを解消するため、ファティのような爆発力を持つウイングは理想的な補強候補となる。
アストン・ヴィラが描く攻撃の未来
ウナイ・エメリの下でアストン・ヴィラは戦術的に進化を遂げ、プレミアリーグで安定した成績を残している。しかし、攻撃面では依然として課題が残る。ワトキンスが孤軍奮闘する場面が多く、二列目からの得点やサイドからの仕掛けが不足しているのだ。ファティが加われば、左サイドからのドリブル突破やカットインによるシュート、さらにはトップ下での創造性が攻撃の幅を大きく広げる。
また、ヴィラはヨーロッパの舞台でも存在感を高めつつあり、選手層の強化は急務となっている。ファティの加入は単なる戦力補強ではなく、クラブの野心を示す道となる。ヴィラ・パークで再生を果たせば、クラブはトップ4争いに食い込む現実的な力を手にするだろう。
ただし、リスクも明白。ファティは過去5年間で繰り返し怪我に苦しみ、コンディションの維持に課題を抱えてきた。プレミアリーグの激しいフィジカルに適応できるかは未知数であり、クラブにとっては賭けの要素を含む補強となる。それでも、彼の潜在能力を考えれば、そのリスクを取る価値は十分にある。
個人的な見解
アンス・ファティのキャリアは、期待と挫折の連続だった。16歳でバルセロナの歴史を塗り替えた少年が、怪我と重圧に押し潰されかけた姿は、サッカーの残酷さを象徴している。
しかし同時に、モナコでの復活の兆しや、プレミアリーグからの関心は、彼がまだ終わっていないことを証明している。
アストン・ヴィラにとって、ファティ獲得はクラブの未来を左右する大きな決断になるだろう。もし彼が完全に復活し、ヴィラ・パークで輝きを取り戻せば、クラブは新たなステージへと進むことができる。
逆に失敗すれば、財政的にも戦力的にも痛手を負う可能性がある。それでも、挑戦なくして飛躍はない。ファティがヴィラのユニフォームをまとい、再び世界を驚かせる瞬間を見られるのか。今、その答えが近づいている。