イヴァン・トニーの名前が再びプレミアリーグの移籍市場を賑わせている。トッテナム・ホットスパーをはじめ、複数のクラブがストライカー不足を補うために彼の獲得を模索しているが、現実は厳しい。
英『TalkSport』の報道によれば、トニーが所属するアル・アハリからの移籍は、サウジアラビア特有の税制が大きな障害となっている。
2024年夏にブレントフォードからアル・アハリへ移籍したトニーは、推定4年契約で週給40万ポンド以上を手にしている。さらにパフォーマンスボーナスを含めれば週給50万ポンドに達するとも言われる。
この金額をイングランドで同等の手取りにするには、税率の関係で週給90万ポンド近い支払いが必要になる。プレミアリーグのクラブにとって、この負担は現実的ではない。
トッテナムの補強戦略とイヴァン・トニー
トッテナムは今季、リチャルリソンの不振やドミニク・ソランケの負傷離脱により、前線の得点力不足が顕著になっている。
トーマス・フランク新監督は攻撃の再構築を急務としており、かつてブレントフォードで指導したトニーを再び手元に呼び戻す構想を描いている。
しかし、アル・アハリとの契約解除には巨額の違約金と税制上のペナルティが伴い、現実的にはローン移籍以外の選択肢はほぼ閉ざされている。
さらに、トニー自身もサウジでの高額な給与を手放すリスクを避けたいと考えている。29歳という年齢を考えれば、キャリアのピークを迎えるこの時期に安定した収入を維持することは合理的な判断だ。
トッテナムが彼を獲得するには、給与の一部を肩代わりするか、アル・アハリとの複雑な交渉を成立させる必要がある。
サウジ税制が生む移籍市場の新たな壁
サウジアラビアの税制は、選手が契約途中で国外へ移籍する場合に大きな不利益をもたらす仕組みになっている。トニーが加入から2年以内に退団すれば、税務上のペナルティが発生し、手取り収入が大幅に減少する。
このため、彼がプレミアリーグへ戻るには、少なくとも2026年以降まで待つ可能性が高いと見られている。
この構造は、サウジリーグがスター選手を長期的に囲い込むための強力な武器となっている。トニーのケースは、その象徴的な事例だ。
アル・アハリで59試合41ゴールという驚異的な成績を残しているが、それでもプレミア復帰の道は閉ざされている。サウジのクラブは資金力だけでなく、制度面でも選手を引き留める力を持っていることが改めて浮き彫りになった。
個人的な見解
イヴァン・トニーの移籍問題は、単なる選手のキャリア選択ではなく、サッカー界全体の構造変化を映し出している。
かつてはヨーロッパのクラブが資金力で市場を支配していたが、今やサウジリーグは制度と財力を組み合わせ、選手を強固に囲い込む仕組みを築いている。
トニーのようなプレミアリーグで実績を残したストライカーが、経済的理由で戻れない状況は、移籍市場の新しい現実を示している。
個人的には、トッテナムが本気でトニーを欲するなら、ローン移籍を軸にした柔軟な戦略を取るべきだと考える。
サウジの税制を逆手に取り、短期的な契約で彼の得点力を活用することは十分に可能だ。トニー自身も2026年ワールドカップを見据えており、プレミア復帰は代表復帰への近道になる。
サウジの制度が壁となる一方で、クラブと選手の双方が妥協点を見出せるかどうかが、今後の焦点になるだろう。