10代ながらも並外れた存在感を放ち続けるサウサンプトンのタイラー・ディブリング。イングランドU-21代表にも選ばれた19歳のウィンガーは、昨季の降格という逆境の中にあってもチームの光明を照らし、多くのビッグクラブの注目を集めている。そして、ここにきて新たな火種が投じられた。ポルトガルの名門FCポルトがこの争奪戦に本格参戦し、移籍市場はさらに熱を帯びている。
タイラー・ディブリングがこれほどまでに多くのクラブから熱視線を集めるのは、そのプレースタイルとポテンシャルが群を抜いているからにほかならない。
かつてサウサンプトンを率いたラッセル・マーティンも、「これまで見た中で最も才能のある選手」と『The Rest is Football』で語っている。現トッテナムのジェームズ・マディソンと比較しながらも、「イングランド代表としても、トップレベルで長くプレーできる資質を持っている」との評価を与え、両足を使える技術と、プレミアリーグの猛者たちとも互角に渡り合うフィジカルを強調した。
また、タッチ数を抑えたスピーディーな展開が主流となる現代フットボールにおいて、ボールを運ぶことで同じ速さの攻撃を成立させられる点も高く評価されている。ワイドでの起用にとどまらず、将来的には偽9番やNo.10としての役割も担えるという柔軟性は、クラブにとって計り知れない価値を持つ。
かねてよりタイラー・ディブリングに熱視線を送ってきたのが、マンチェスター・ユナイテッドだ。ユース時代からスカウト陣が目を光らせており、昨年12月には2100万ポンドというオファー案が水面下で検討されていたという噂も浮上。
そして今、事態を一変させる存在が現れた。ポルトガル紙『Record』によれば、FCポルトがタイラー・ディブリングの獲得に強い関心を示し、選手交換やローン契約を含む複数のプランで交渉を進めようとしているという。これは、攻撃陣や中盤の補強に注力するユナイテッドにとっては、計画に狂いが生じかねない動きだ。
さらに、チェルシー、トッテナム・ホットスパー、さらにはバイエルン・ミュンヘンまでが獲得レースに加わっていると報じられており、今夏のマーケットを賑わす主役の1人として、その動向から目が離せない。
サウサンプトンは2027年6月まで契約を結んでいることもあり、クラブ側が移籍に関して強い立場を保っている。英『The Telegraph』によると、クラブはおよそ1億1500万ユーロを超える移籍金を求めているとされており、仮にそれが成立しなくても、桁違いの評価額で交渉に臨む構えを見せている。
一方で、本人の心情は複雑だ。8歳から在籍しているクラブに対して深い愛着を示し、「本当に素晴らしいチーム」と語りつつも、海外クラブからの関心を認識しており、キャリアの次なるステップに前向きな姿勢を見せている。
タイラー・ディブリングの去就を巡る駆け引きは、移籍市場が本格化する中で大きな注目を集めている。マンチェスター・ユナイテッドがこの逸材を本気で手中に収めたいのであれば、他クラブに先を越される前に決断が求められる。
ポルトガルのFCポルトが新たな選択肢として浮上する今、交渉は予断を許さない状況へと突入した。若き才能がどのユニフォームに袖を通すのか。