サウジアラビア資本の強力な後押しを受けるニューカッスル・ユナイテッドは、この夏も電撃的な補強を狙っている。独『CF Bayern Insider』によると、ターゲットとなっているのは、ブンデスリーガの王者バイエルン・ミュンヘンに所属するフランス代表ウィンガー、キングスレイ・コマン。バイエルン側も売却に前向きな姿勢を見せており、移籍金は約2900万ポンドに設定されていると伝えられている。
欧州トップクラスの実績を誇るコマンがイングランドへ渡る可能性は、プレミアリーグ全体の注目を集めており、移籍市場における「目玉案件」として大きな存在感を放っている。
キングスレイ・コマンは、ユヴェントス、パリ・サンジェルマン、そしてバイエルンと、欧州を代表するクラブを渡り歩いてきた技巧派アタッカーだ。そのキャリアは「タイトル製造機」とも称されるほどで、クラブレベルで獲得可能なトロフィーはほぼすべて手中に収めてきた。
今季はバイエルンにおいてヴァンサン・コンパニ新監督の下、戦力として再評価される場面もあった。特に、クラブワールドカップのオークランド・シティ戦では開始6分でゴールを奪い、前半だけで2ゴール1アシストを記録。Sofascoreでは9.8という驚異的な評価を受け、存在感を見せつけた。
今季の出場記録も41試合7ゴール4アシストと安定しており、まだ28歳という年齢を考えれば、ピークに近い状態でプレミアリーグへ移籍する可能性が高い。即戦力としての期待はもちろん、経験値豊富な「勝者のメンタリティ」もクラブにとって大きな財産となるはずだ。
ただし、バイエルンも単なる放出では終わらない。レロイ・サネがフリーでガラタサライへ移籍し、ウィンガーの枚数が減少している状況の中、補強に向けてラファエル・レオンやニコ・ウィリアムズ、ブラッドリー・バルコラといった若き才能に目を向けていると報じられている。
ニューカッスルがコマン獲得に動いた理由は単なる戦力補強ではない。より深い背景には、アンソニー・ゴードンの去就問題と、ブライアン・ムベウモ獲得失敗の影響がある。
まずゴードンに関しては、リバプールが再び獲得に乗り出しているとされており、本人も憧れのクラブであるリバプール移籍を希望しているとの報道も出ている。仮にゴードンが退団となれば、そのポジションを即埋められる人材が求められるのは明白だ。
一方で、ニューカッスルはかつてブレントフォードのムベウモに強い関心を示していたが、マンチェスター・ユナイテッドが争奪戦を制し、移籍が実現する見通しだ。ニューカッスル側はムベウモの移籍金約6000万ポンドを「過剰」と判断し、撤退を余儀なくされた。
こうした背景から、ニューカッスルはコマンに白羽の矢を立てる形となった。チャンピオンズリーグ出場権を確保している同クラブは、コマンにとってもヨーロッパ最高峰の舞台で輝き続ける魅力的な選択肢となり得る。
とはいえ、この移籍にはまだ多くの障壁が存在している。最も大きなネックとなるのがサラリーの問題で、コマンは現在バイエルンで週給約24.7万ポンドを受け取っており、ニューカッスルの現行給与体系では突出した数字だ。クラブ最高給取りのブルーノ・ギマランイス(約16万ポンド)を大きく上回る水準であるため、新たな契約体系を導入する覚悟が必要となる。
さらに、サウジアラビアのクラブやバルセロナも動向を注視しており、競争の激化は避けられない。特にバルセロナは、ルイス・ディアスやマーカス・ラッシュフォードの獲得が不発に終わった場合、コマン獲得に本腰を入れる可能性がある。
ニューカッスル・ユナイテッドにとって、キングスレイ・コマンの獲得は単なる補強ではなく、クラブの方向性と野心を示すメッセージとなる。しかし、選手の高額サラリー、複数クラブとの競合、本人の希望といった不確定要素が重なり合い、決して簡単な交渉にはならない。
この夏の移籍市場において、ニューカッスルがどこまで本気で「ビッグディール」を成立させる覚悟を持っているかが問われる。果たして、彼らはプレミアリーグの次なる強豪としての地位を築くため、コマンという大物を説得し、スタジアム・オブ・ライトに迎え入れることができるのだろうか。