昨季、プレミアリーグで苦汁を舐めたマンチェスター・ユナイテッドは、2025-26シーズンに向けて確実な巻き返しを期している。その鍵を握るのが、ストライカーの再編だ。
かねてより得点力不足が問題視されてきたレッドデビルズは、この夏、前線の再建に本腰を入れている。その中で、ユベントスに所属するセルビア代表ストライカー、ドゥシャン・ヴラホヴィッチ(25歳)との交渉が前向きかつ建設的に進んでいると、『FootballTransfers』が独占的に伝えた。
ヴラホヴィッチにとってプレミアリーグは、単なるステップアップではない。彼にとって、そこは夢の舞台だ。かねてよりイングランド行きを希望していた同選手は、ユナイテッドとの交渉に強い関心を示しており、自らがクラブ側にアプローチをかけたとも報じられている。
彼が移籍先としてユナイテッドを選んだ背景には、ルベン・アモリム監督の存在と、フィジカルとスピードが求められるプレミアの環境が自身のポテンシャルを最大限に引き出すと考えているからだ。
また、現在はユベントスとの契約最終年に突入しており、同クラブ側も高額な年俸(1000万~1200万ユーロ)に対する負担を軽減するため、売却に前向きな姿勢を見せている。
さらに、英『TEAMtalk』によれば、移籍金は2500万~4500万ユーロという「破格」の条件で獲得可能ともされており、INEOS主導でコスト効率を重視するユナイテッドの現体制にとっては極めて現実的なターゲットとなり得る。
ヴィクトル・ギェケレシュ断念からの現実的な路線変更、そして広がる補強網
当初ユナイテッドは、スポルティングCPのヴィクトル・ギェケレシュに照準を絞っていた。しかし、欧州大会の出場権を失った影響もあり、ギョケレスはアーセナル移籍に傾いたとポルトガル現地メディアが報道。これにより、ユナイテッドは戦略の修正を余儀なくされ、ヴラホヴィッチが急浮上する形となった。
この動きは一時的なパニックではなく、新たなフットボールディレクター、ジェイソン・ウィルコックスの下で冷静に導かれた現実的な代替案として捉えられている。ヴラホヴィッチとの接触には彼自身が深く関与しているという。
加えて、ユナイテッドはすでにウルブズからマテウス・クーニャを6250万ポンドで獲得することで合意済み。さらに、ブライアン・ムベウモ(ブレントフォード)やウーゴ・エキティケ(フランクフルト)といった攻撃陣へのアプローチも進行中であり、積極的な動きが見られる。
現有戦力のラスムス・ホイルンドにはインテル・ミラノへの売却話も浮上しており、その資金を新たなストライカー獲得に充てる構想も水面下で進んでいるという。
ヴラホヴィッチは、1.90mの長身を活かしたポストプレーに秀でる一方で、運動量と推進力を兼ね備えた現代的なストライカーでもある。ユベントスでは度重なる負傷と戦術的制約により爆発的な成績こそ残せなかったが、それでも昨季はセリエAで15得点。特筆すべきは、得点の多くを左足で決めており、空中戦ではなく地上戦で違いを生むストライカーという点だ。
2020〜2022年にはフィオレンティーナとユベントスをまたぎ、公式戦50得点以上をマーク。ここ数年こそ20得点に届いていないが、まだ25歳という若さを考えれば、完成された選手には至らずとも「伸びしろ」は十分。
ロングレンジからのミドルや直接FKなど、多彩な得点パターンを持ち、ユナイテッドに欠けていたフィニッシュ力を提供できる可能性は高い。
移籍市場はまだ序盤戦だが、マンチェスター・ユナイテッドがこの夏に掲げる補強戦略の方向性は明確になりつつある。ヴラホヴィッチという未完の大器を手に入れることができれば、それは単なる得点源の獲得にとどまらず、クラブの再建に向けた象徴的な一手となるかもしれない。