イタリア北東部の街ウディネ。そのスタジアムで、ひとりの若きフランス人の22歳MFアルトゥール・アッタが静かに、しかし確実にヨーロッパ全土へと名を轟かせている。彼のプレーは数字以上の説得力を持ち、観る者の心を揺さぶる。
イタリアメディア『Messaggero Veneto』によれば、バルセロナとマンチェスター・シティがこの才能に強い関心を示しているという。だがウディネーゼは冬の移籍市場での放出を拒み、来夏に4000万ユーロという評価額を掲げている。チームの未来を背負う存在であり、簡単に手放すつもりはない。
セリエAで育まれた万能性と存在感
アッタのキャリアはレンヌの街から始まった。スタッド・レンヌ、そしてFCメス。フランスの育成文化を体現するように、彼は段階を踏みながら成長を遂げた。2024年夏、ウディネーゼがローンで獲得すると、その適応力は驚くほど速かった。半年後には完全移籍が成立し、クラブは彼を中盤の核として据える決断を下した。
これまでに41試合に出場し、2ゴール2アシストという数字を残している。表面的には控えめな数字だが、彼の真価はボールを持たない時間にある。インターセプトのタイミング、相手の攻撃を寸断する読みの鋭さ、そして攻撃への切り替えで見せる推進力。
セリエAの戦術的な密度の中で、彼はすでにゲームを支配する術を身につけつつある。ウディネーゼの中盤において、彼の存在はただの歯車ではなく、リズムを生み出す心臓部となっている。
バルセロナとマンチェスター・シティの視線
バルセロナがアッタに目を向ける理由は明快だ。ハンジ・フリックの下で中盤は充実しているものの、財政面のバランスを取るために来夏には放出が避けられない選手もいる。ライアン・フラーフェンベルフらと並び、アッタは新たな補強候補としてリストアップされている。彼の万能性は、ペドリやガビといった若手との共存を可能にし、戦術的柔軟性をさらに高めるだろう。
一方、マンチェスター・シティの事情はより切実だ。ロドリが再び負傷に見舞われ、ベルナルド・シウバの将来も不透明。ペップ・グアルディオラが築いた中盤の支配力を維持するためには、新たなピースが不可欠だ。
アッタの守備的な安定感と攻撃への推進力は、シティのスタイルに自然に溶け込む可能性を秘めている。シティは来夏に少なくとも一人の中盤補強を迫られており、その候補の一人がアッタである。
バルセロナとシティだけではない。ACミランとナポリもアッタに関心を寄せている。ミランは若手中心の再建路線を進めており、アッタのような即戦力かつ将来性を兼ね備えた選手は理想的。
ナポリにとっても、アッタは中盤の刷新を進める上で魅力的な存在だ。セリエA内での移籍は競争を激化させるが、ウディネーゼが4000万ユーロという高額を設定したことで、資金力のあるクラブに絞られる可能性が高い。
個人的見解
アッタのプレーを分析すると、彼は「次世代型の守備的ミッドフィールダー」としての資質を備えている。ボール奪取能力に加え、前線への推進力を持ち合わせる点は、従来のアンカー像を超えている。
現代サッカーにおいて、攻守の切り替えを一人で担える存在は希少であり、アッタはその役割を果たせる選手だ。4000万ユーロという評価額は、むしろ控えめに映る。市場のインフレを考えれば、彼の価値はさらに高まる可能性がある。
来夏の移籍市場では、バルセロナとマンチェスター・シティの資金力と戦略が大きな鍵を握るだろう。だが、私が注目するのはアッタ自身の選択だ。セリエAでさらに経験を積み、クラブの中心として成熟する道もある。あるいは、ヨーロッパの頂点を目指すクラブで新たな挑戦を選ぶか。
どちらにせよ、彼のキャリアは今まさに分岐点に立っている。冷静な判断と情熱的なプレー、その両方を兼ね備えた彼がどの道を歩むのか。来夏、ヨーロッパ中がその答えを待ち望むことになる。