ブンデスリーガのスタジアムを切り裂くスプリントで観客を熱狂させてきたカリム・アデイェミ。その去就が、2025/26シーズンの移籍市場を揺るがす最大のテーマのひとつとなっている。ボルシア・ドルトムントが提示した7500万ポンドの評価額は、マンチェスター・ユナイテッドにとって重すぎる負担となり、クラブは一歩引いた姿勢を見せ始めている。
一方で、アーセナルとインテルは積極的な動きを見せ、代理人ジョルジュ・メンデスとの交渉を進めていると英『The Mirror』が伝えた。
アーセナルを望むアデイェミとユナイテッドの葛藤
23歳となったアデイェミは、ドルトムント加入以来、公式戦での数字以上に相手守備陣を切り裂く推進力と縦への突破力で存在感を示してきた。今季もここまで公式戦15試合で4ゴール3アシストを記録し、ドルトムントの攻撃に欠かせない存在となっている。しかし、本人はマンチェスター・ユナイテッドではなくアーセナルへの移籍を望んでいると報じられている。
ユナイテッドはルベン・アモリム監督の下で攻撃陣の再構築を進めており、既に複数の前線補強を行った。アデイェミのスピードと柔軟性は確かに魅力的だが、ドルトムントが要求する金額はクラブの財政戦略においてリスクが大きい。さらに、本人がアーセナルを優先している以上、ユナイテッドが本腰を入れる可能性は低下している。
アーセナルにとっては、アデイェミの獲得は攻撃の幅を広げる大きな一手となる。ガブリエル・ジェズスやブカヨ・サカといった既存の攻撃陣に加え、縦への推進力を持つアデイェミが加われば、プレミアリーグでの優勝争いにおいて強烈な武器となる。
インテルの攻勢とヨーロッパ全体の争奪戦
インテルは代理人ジョルジュ・メンデスと直接交渉を開始し、来夏の獲得に向けたシナリオを描いている。セリエAで再び欧州の頂点を狙うインテルにとって、アデイェミの縦への推進力とカウンター局面での爆発力は理想的な補強ポイント。ラウタロ・マルティネスとのコンビネーションを想像すれば、インテルの攻撃陣が一層ダイナミックになる未来図は容易に描ける。
さらに、レアル・マドリードやバルセロナもアデイェミ獲得に関心を示しているとされ、移籍市場はまさに群雄割拠の様相を呈している。ドルトムントが設定した高額な移籍金は、クラブの財政的な強気を示すだけでなく、選手の市場価値を最大限に引き出すための駆け引きでもある。
個人的な見解
アデイェミの移籍を巡る現状は、ヨーロッパの移籍市場における「スピードスター争奪戦」の典型例。
ドルトムントは育成クラブとしてのブランドを維持しつつ、選手を高額で売却するビジネスモデルを確立している。アデイェミのケースもその延長線上にあり、クラブが提示する7500万ポンドという金額は、選手の価値を最大限に引き出すための強気な姿勢そのものだ。
ユナイテッドがこの金額を支払う可能性は低い。既に攻撃陣を刷新したばかりであり、アデイェミ獲得は戦術的なオプションを広げる意味はあるものの、財政的リスクを伴う。それはアーセナルも然り。
むしろ、インテルの方が現実的に動いている印象を受ける。ラウタロ・マルティネスとの共演はセリエAに新たな刺激を与えるだろうし、カウンター主体の戦術においてアデイェミの爆発力は計り知れない。
最終的に、アデイェミが選ぶのは「自らが輝ける舞台」だ。プレミアリーグの強度か、セリエAの戦術的洗練か、それともラ・リーガの華やかさか。どの選択肢を取るにせよ、彼の移籍は2026年夏の市場を大きく揺るがすことになると確信している。