2025年のバロンドール授賞式で、ブラジルの至宝ハフィーニャが5位に名を連ねた瞬間、カタルーニャの夜空は誇らしげな歓声に包まれた。しかし、その輝きが強ければ強いほど、遠く離れたイングランド北東部、タイン川のほとりで蠢く影もまた濃さを増している。
ニューカッスル・ユナイテッドは今、欧州で最も恐れられるアタッカーの一人へと進化した28歳の獲得に向け、かつてない規模の攻勢を準備していると、スペイン紙『Fichajes』が報じた。
冬の移籍市場が開く2026年1月まであと1ヶ月。セント・ジェームズ・パークの主たちは、バルセロナが抱える「栄光と借金」という歪な構造を突き、カンプ・ノウの王様を連れ去ろうと画策している。
バロンドール5位の「怪物」とバルセロナの計算式
昨シーズン、ハフィーニャが残した数字は暴力的なまでに圧倒的だった。公式戦57試合に出場し、34ゴール26アシスト。このスタッツは、彼がもはやサイドライン際でドリブルを仕掛けるだけのウインガーではないことを証明している。
ハンジ・フリック監督によって中央のレーンへ侵入する自由を与えられた彼は、プレースメーカーとしての視界と、ストライカーのような決定力を併せ持つ完全無欠のアタッカー、「ハフィーニャ 2.0」へと変貌を遂げた。
ピッチ上での彼は、フリック戦術の中心そのもの。前線からの獰猛なハイプレスで相手のビルドアップを破壊し、奪ったボールを瞬時にゴールへと結びつける。カンプ・ノウのサポーターにとって、背番号11は勝利への保証手形であり、ラミン・ヤマルと共に形成する両翼は、欧州中のディフェンダーを恐怖に陥れている。
だが、ピッチ外に目を向ければ、バルセロナの現実は依然として冷徹な数字に支配されている。ジョアン・ラポルタ会長とデコSDの前には、スタジアム改修費の償還とラ・リーガの厳格なサラリーキャップという高い壁が立ちはだかる。
ハフィーニャの市場価値がピークに達した今、彼を売却すれば、獲得時の5500万ポンドを遥かに上回るキャピタルゲインを得られる。さらに、彼の高額な給与を削減できれば、来夏の補強プランにも余裕が生まれる。
クラブ首脳陣にとって、ハフィーニャは「手放したくない戦力」であると同時に、「今が最も高く売れる金融商品」でもあるという皮肉な現実が存在するのだ。
PIFが描く「覇権」へのラストピース
一方、ニューカッスルには一刻の猶予もない。エディ・ハウ監督率いるチームは、CL出場権争いに踏みとどまっているものの、攻撃陣の迫力不足は否めない。特に今夏、クラブ史上屈指の高額で迎え入れたアンソニー・エランガが期待を裏切り、適応に苦しんでいる事実は、首脳陣の頭痛の種となっている。
ニック・ウォルトメイドというドイツ代表の未来を担う可能性もあるストライカーを獲得しながらも、極上のパスを供給し、自らも得点を奪えるもう一人の主役が欠けているのだ。
ここでハフィーニャの名前が浮上するのは必然。リーズ・ユナイテッド時代にプレミアリーグの激しさを骨の髄まで理解しており、適応のリスクが皆無に等しい。さらに、サウジアラビアの公的投資基金(PIF)をバックに持つニューカッスルにとって、金銭的な障壁は事実上存在しない。
ハフィーニャを攻撃の核に据えることで、チームを「CL常連」から「タイトルコンテンダー」へと引き上げること。彼のエネルギッシュなスタイルは、エディ・ハウが志向するインテンシティの高いフットボールとマッチ。もしこの取引が成立すれば、ニューカッスルの攻撃は劇的な進化を遂げ、プレミアリーグの勢力図そのものを塗り替える可能性がある。
個人的な見解
この移籍話、実現の鍵を握るのは「ハフィーニャ本人の野心」の在り処だろう。彼は2022年、チェルシーからの巨額オファーを蹴ってまで「夢」であるバルセロナを選んだ。
そして今、彼はその夢の舞台で主役を演じている。バロンドール5位という評価は、彼が世界最高のクラブで、世界最高の選手たちと競い合っているからこそ得られたもの。今のニューカッスルがいかに魅力的でリッチなプロジェクトを提示しようとも、バルセロナというブランド、そしてCL優勝を現実的に狙える環境と比較すれば、どうしても見劣りしてしまう。
しかし、バルセロナ側が財政的な理由で売却やむなしというシグナルを出し、ハフィーニャに「君を犠牲にする必要がある」と伝えた場合は話が変わってくる。
選手としてのプライドを傷つけられた彼が、自らをレギュラーとして迎え入れてくれるニューカッスルへ心を傾けるシナリオは十分にあり得る。
エディ・ハウの下で、プレミアリーグという最も注目度の高い舞台で再び暴れ回るハフィーニャの姿を見たいという願望は、私の中にも確かにある。
だが、今の彼がカンプ・ノウで見せている魔法のようなプレーを見るにつけ、それを失うことはラ・リーガにとって、いやサッカーファン全体にとって大きな損失になるのではないかという懸念も拭えない。この冬、ハフィーニャの決断が欧州フットボールの勢力図を大きく揺るがすことになるかもしれない。
