アーセナルに所属するウクライナ代表DFオレクサンドル・ジンチェンコの去就に暗雲が立ち込めている。2022年にマンチェスター・シティから加入して以降、攻守両面で貢献してきたこの左サイドバックだが、今夏の移籍が濃厚となってきた。
ジンチェンコは昨季プレミアリーグでの先発出場がわずか5試合。カップ戦を含めても出場時間は789分にとどまり、序列の低下は明白。アーセナルは来季のチーム編成において、若手マイルズ・ルイス=スケリーや、イタリア代表DFリッカルド・カラフィオーリも在籍。さらに、冨安健洋やヤクブ・キヴィオールといった選手も左サイドでのプレーが可能であり、ジンチェンコの役割はますます限定的になっているのが現状だ。
フルハムが積極姿勢、ロンドン定住も追い風に
そんな中、ジンチェンコの獲得に最も前向きと報じられているのがフルハムだ。マルコ・シルバ監督は補強を強くクラブに要請しており、特に守備陣の再構築を優先事項としている。複数のポジションを高いレベルでこなせるジンチェンコの特性は、まさにシルバ監督の理想像と重なる。
英『The Sun』によれば、フルハムは移籍金として1000万ポンドを準備しており、アーセナルが求める1270万ポンドよりも低い水準ながら、合意を目指して交渉を進めているという。
選手本人とその家族がロンドンに定住している点も、同クラブにとっては有利な条件となっている。国外から関心を寄せているACミラン、アヤックス、ボルシア・ドルトムントに比べ、生活基盤を変えずに済むという点は決して小さくない。
ACミランは、テオ・エルナンデスのサウジ移籍が成立した場合にジンチェンコ獲得へ動くとされるが、イタリアの著名ジャーナリストであるマッテオ・モレット氏は現時点でアーセナルとの接触は確認されていないと報じており、進展は限定的だ。
アーセナルとしても、契約が2026年に満了するジンチェンコを来夏にフリーで失うリスクを回避する意味でも、今夏の売却は現実的な判断といえる。仮にフルハムの提示額で合意した場合、獲得時に支払った移籍金を下回るためクラブは損失を被る可能性が高いが、今のチーム状況を鑑みれば避けられない選択肢となりそうだ。
28歳という年齢を考えれば、今後数年間がキャリアのピークになる可能性もある。だからこそ、出場機会を得られる環境を求めて新天地を模索する姿勢は自然だ。
フルハムは今季プレミアリーグを11位で終え、来季に向けて右サイドバックや中盤の補強にも取り組む構えだ。その中でジンチェンコは、多用途性と経験を兼ね備えた貴重な戦力として、構想の中心に据えられている。果たして彼の選択がどこに落ち着くのか?