ソン・フンミンのいない冬に差す光 ユヴェントスの「背番号10」ユルディズ獲得計画

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デル・ピエロの再来…ユベントスの未来を背負う20歳FWケナン・ユルディズに対し、アーセナルが関心か? Tottenham Hotspur

トッテナム・ホットスパー・スタジアムに吹き抜ける風は、例年以上に冷たく肌を刺す。この空虚感の正体は明白。長年、我々の左サイドを支配し、幾度となくチームを窮地から救ってきた韓国の英雄、ソン・フンミンが去った夏から、半年が過ぎようとしている。

だが、その巨大な穴は未だ埋まっていない。モハメド・クドゥスやシャビ・シモンズ、ウィルソン・オドベールらが奮闘していることは認めるが、あの背番号 “7” が持っていた決定力とチーム全体を鼓舞する魂に匹敵する何かが見当たらないのだ。

しかし、感傷に浸る時間は終わった。クラブはようやく、その空白を埋めうる本物の才能に照準を定めたようだ。英『TEAMtalk』が報じたところによると、トッテナムはユヴェントスに所属するトルコ代表FWケナン・ユルディズの獲得に本腰を入れているようだ。

20歳にしてセリエAの重圧を跳ね除けるこのアタッカーに対し、アーセナル、チェルシー、リヴァプールというプレミアリーグの猛者たちも熱視線を送っている。争奪戦は避けられないが、スパーズには引けない理由がある。

トリノで覚醒した才能と、交渉テーブルの不協和音

バイエルン・ミュンヘンのアカデミーから、2022年7月にイタリアの絶対王者ユヴェントスへと渡ったケナン・ユルディズ。彼が歩んできたこの3年間の軌跡は、急成長という言葉だけでは片付けられない凄みがある。

2023-24シーズンのトップチームデビュー以来、彼はビアンコネロのユニフォームを身に纏い、すでに公式戦通算100試合以上に出場している。20歳という年齢を考えれば、守備戦術が極めて高度なイタリアにおいて、これほど継続的にピッチに立ち続けること自体が驚異的。

数字も彼の非凡さを証明している。これまでに記録した22ゴール・17アシストというスタッツは、彼が単なるドリブラーではなく、ゴールに直結する仕事ができる「フィニッシャー」であることを示している。

左サイドからカットインして右足を振り抜く姿は、かつてのデル・ピエロを彷彿とさせ、同時に我々が失ったソン・フンミンの幻影を重ねてしまうほどに鮮烈だ。ボールを持った瞬間の「何かやってくれる」という期待感。今のスパーズに最も欠けている成分が、彼にはある。

だが、蜜月関係にあったはずのユルディズとユヴェントスの間に、隙間風が吹き始めた。現地からの報道によれば、クラブとの契約延長交渉が泥沼化し、停滞しているという。この事実は、プレミアリーグのスカウト陣にとって、獲物が弱った瞬間の血の匂いと同じ。

交渉が長引けば長引くほど、選手サイドは他国の魅力的なオファーに耳を傾けるようになる。この機を逃すまいと、ロンドンのクラブを中心とした包囲網が形成されたと伝えられている。

ユルディズの最大の魅力は、そのポリバレント性にある。左ウイングを主戦場としながらも、セカンドトップやトップ下でも高水準のプレーを見せる。トーマス・フランクが求める、前線での流動的なポジションチェンジと、狭い局面を個人技で打開する能力。これらを兼ね備えたユルディズは、現在のチームに欠けている創造性の欠片を埋めるラストピースになり得る。

ロンドンの宿敵と赤い悪魔たちとの四つ巴

当然、これほどの逸材をライバルたちが見過ごすはずがない。アンフィールドのリヴァプールもまた、前線の再構築を進める中でユルディズをリストアップしている。モハメド・サラー以降の時代を見据える彼らにとって、得点能力とチャンスメイクを両立できるアタッカーは喉から手が出るほど欲しい人材。

さらに厄介なのが、同じロンドンに本拠地を置くチェルシーだ。彼らはブライトンから獲得したファクンド・ブオナノッテの去就が不透明になっており、長期的な視点で新たな攻撃の核を探している。

ブオナノッテのローン契約に買取オプションが含まれていなかった失態を挽回するため、トッド・ベーリー率いるフロントが潤沢な資金を投じてくる可能性は極めて高い。彼らが動き出せば、移籍金は天井知らずに跳ね上がるだろう。

そして、我らが宿敵アーセナル。彼らは昨夏の移籍市場でもユルディズ獲得を画策し、失敗に終わった経緯がある。ミケル・アルテタ監督が構築した強固なシステムにおいて、レアンドロ・トロサールの将来に不確定要素が浮上している今、彼らは再びトルコの天才に触手を伸ばしている。

北ロンドンダービーのライバルに、将来のバロンドール候補を奪われる屈辱だけは絶対に避けなければならない。トッテナムは長らくアタランチアのアデモラ・ルックマンを追っていたが、現在はターゲットをユルディズと、同じく去就が騒がれるロドリゴの二人に絞り込んだようだ。

個人的な見解

財布の紐を固く結んだまま春を迎えるつもりなら、スパーズの未来は暗いままだ。ソン・フンミンという偉大な柱を失った今、サポーターが求めているのは「有望な若手」という言葉で濁された妥協の産物ではない。

ピッチの空気を一変させ、独力で試合を決定づける本物。ケナン・ユルディズは、その条件をすべて満たしている。

確かに、ユヴェントスとの交渉は一筋縄ではいかないだろう。移籍金は高騰し、競合相手は資金力のあるクラブばかりだ。だが、ここで引いてしまえば、トッテナムはいつまでも「あと一歩」のクラブから脱却できない。

20歳の若者がセリエAで100試合を戦い抜いた経験値は、プレミアリーグの激しい肉弾戦にも即座に適応できる下地となるはずだ。独特のリズム、相手DFを無力化するファーストタッチ、そしてゴールへの渇望。それは、かつてガレス・ベイルやソン・フンミンが我々に見せてくれた夢の続きを予感させる。

もしアーセナルやチェルシーに彼を奪われ、数年後に彼らがタイトルを掲げる姿を見ることになれば、その悔恨は計り知れない。リスクを恐れず、巨額を投じてでも獲りに行く。

それこそが、ビッグクラブとしての矜持であり、ソン・フンミンへの最大の敬意となるはず。ユルディズがスパーズの白いユニフォームに袖を通し、新たな歴史を刻む瞬間を、私は強く望んでいる。