ラトクリフ卿の冷徹な算盤!ブルーノ・フェルナンデス退団が現実味を帯びる?

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ユナイテッド “主将” ブルーノ・フェルナンデス、今夏退団の可能性浮上…バイエルンが代替プランで急接近か Manchester United

2025年のカレンダーが残り少なくなると同時に、オールド・トラッフォード周辺の空気は張り詰めている。ピッチ上でのパフォーマンスよりも、ピッチ外での数字がクラブの運命を左右しようとしているからだ。

マンチェスター・ユナイテッドのキャプテン、ブルーノ・フェルナンデス。長きにわたりこの名門の心臓として鼓動を続けてきた男に対し、クラブ首脳陣は驚くべき値札を用意した。

海外メディア『Caught Offside』によれば、1月の移籍市場において7000万ポンドのオファーが届けば、共同オーナーであるジム・ラトクリフ卿は首を縦に振る構えだという。サウジ・プロ・リーグのアル・イテハドが熱烈な視線を送る中、赤い悪魔は歴史的な転換点を迎えようとしている。

7000万ポンド対5600万ポンド…イネオスが弾く冷徹な損得勘定

このニュースの核心は、ブルーノの契約に隠された「条項」と、現在提示されている「金額」のギャップにある。現行契約には、イングランド国外のクラブが対象となる契約解除条項が含まれており、その効力は来夏、つまり2026年の夏に発動する。設定額は5600万ポンド。

これに対し、この冬にサウジ勢から引き出そうとしている額は7000万ポンド。この間に横たわる1400万ポンドの差額こそが、イネオス・グループを突き動かす最大の動機である。

プレミアリーグの利益と持続可能性に関する規則(PSR)の枠組みの中で、1400万ポンドという純利益は計り知れない価値を持つ。31歳を迎えた選手に対し、これほどの高値をつけられるタイミングは、事実上この冬がラストチャンスだ。

来夏になれば、選択権はクラブから選手と相手クラブへと移り、ユナイテッドは指をくわえて5600万ポンドを受け取るしかなくなる。ビジネスの論理で語れば、需要がピークに達している今こそが「売り時」であり、それを逃す手はない。ラトクリフ卿とその側近たちは、感情や過去の功績を一切排除し、グラフの曲線が交差するこの一点を見逃さない構えだ。

アル・イテハドをはじめとするサウジ・プロ・リーグの資金力は、依然として欧州市場を席巻する脅威であり続けている。彼らにとって7000万ポンドは、リーグのブランド価値を高めるための必要経費に過ぎない。

クリスティアーノ・ロナウドら続くビッグネームとして、ブルーノ・フェルナンデスは格好のターゲット。彼の実力、リーダーシップ、そして知名度は、中東の野心を体現するピースとして申し分ない。ユナイテッドが設定した強気の価格設定も、彼らの財布の紐を固くさせる障害にはなり得ないだろう。

喪失する「創造性の源泉」と再建へのジレンマ

しかし、財務諸表上の数字が整ったとしても、ピッチ上の現実はそう単純ではない。ブルーノ・フェルナンデスは、ユナイテッドの攻撃における全権大使。彼を経由しない攻撃は形を成さず、彼がいないピッチはコンパスを失った船のように漂流する。

リスクを恐れないスルーパス、前線からの猛烈なプレッシング、そして何より、劣勢を一人で覆そうとする執念。これらを失うことは、戦術的なオプションの一つを失うレベルの話ではない。チームの背骨を正月から引き抜くようなものだ。

今シーズンのユナイテッドは、若手主体への切り替えを進めつつあるが、ブルーノの代役を務められるタレントは皆無である。メイソン・マウントやコビー・メイヌーは質の高い選手だが、ブルーノが持つ局面を一変させる力とは異質。

彼を放出した瞬間に手にする7000万ポンドは、確かに新たな補強資金となるだろう。だが、1月の市場で即戦力のプレーメーカー、それもプレミアリーグの強度に適応し、即座にキャプテンシーを発揮できる人材を見つけるなど、砂漠でダイヤモンドを探すよりも困難となる。

それでもクラブが売却に傾くならば、それは一つの明確なメッセージとなる。「個」に依存したサッカーからの脱却だ。ブルーノのプレースタイルは諸刃の剣でもある。ボールロストのリスクを冒してでも決定的なパスを狙い続ける彼のスタイルは、ポゼッションとコントロールを重視する現代サッカーのトレンドと時に衝突する。

ラトクリフ卿が目指すのが、より組織的で規律の取れた集団であるならば、あまりにも強烈な個性を持つキャプテンとの決別は、避けて通れない通過儀礼なのかもしれない。

個人的な見解

このタイミングでの売却論浮上に対し、私は猛烈な違和感を覚える。確かに31歳という年齢と7000万ポンドという金額を天秤にかければ、経営判断として「正解」に見えるかもしれない。

しかし、フットボールクラブは投資ファンドの商品ではない。シーズンの折り返し地点、過密日程が極まる1月に、精神的支柱であり戦術の核であるキャプテンを売り飛ばすなど、現場の士気を粉砕する愚行。

来夏の5600万ポンドでの放出であれば、後釜を探す準備期間もあり、ファンも心の整理がつくだろう。たかだか1400万ポンドの上積みを得るために、今シーズンの残りを棒に振るリスクを冒す価値が本当にあるのか。

一方で、ブルーノ自身がこの移籍を望むのであれば話は変わる。長年、低迷するチームを一人で背負い込み、批判の矢面に立たされてきた彼の疲弊は限界に近いようにも見える。

もし彼が、キャリアの晩年を中東という新たな環境で、かつての同僚たちと共に過ごすことを望むなら、我々は黙って背中を押すべきだろう。だが、クラブ主導で「金になるうちに売る」という姿勢が見え隠れする場合、それはオールド・トラッフォードに残るファンへの裏切りに等しい。

ラトクリフ卿が標榜する改革が、単なるコストカットと集金マシンへの変貌ではないことを、この冬の決断で示してほしいと切に願う。