ヨーロッパの舞台でも躍動を見せたアストン・ヴィラが、今夏の移籍市場で攻撃陣の強化に本腰を入れている。その中心には、すでにヴィラ・パークで実力を証明しているマルコ・アセンシオと、リバプールで出場機会を求めるハーヴェイ・エリオットの名が挙げられる。両者ともにタイプの異なるプレーメーカーだが、クラブが求める攻撃の多様化において、鍵を握る存在となりうる。
2月にパリ・サンジェルマンからレンタルで加入したアセンシオは、プレミアリーグやチャンピオンズリーグで合計21試合に出場し、8ゴールという印象的な成績を残した。加入以前の約1年半でPSGで記録した7ゴールを上回る数字は、ヴィラでの活躍を物語るには十分だ。
ウナイ・エメリ監督は、彼を中核とする構想を掲げ、再生を託した。その期待に応えるように、アセンシオ自身もチームやファンに感謝の意を表している。西『Estadio Deportivo』の報道によれば、ヴィラ残留を熱望しているのは指揮官だけではなく、DFパウ・トーレスなどチームメイトの多くも同様だという。
しかし、交渉のテーブルに座るパリ・サンジェルマンは買い取りに対して消極的な姿勢を崩していない。トゥールーズ戦でのルイス・エンリケ監督との衝突を経て、アセンシオはクラブに残る意思が薄れているとされるが、パリ側は契約が残る選手に対して譲歩するつもりはないようだ。
そもそもレンタル契約には買い取りオプションが付随しておらず、アストン・ヴィラは新たな移籍金の支払いを迫られる立場。フランスの複数メディアは、PSGが求める金額を「不相応」として伝えており、交渉は膠着状態にある。アセンシオの去就が明確になるのは7月になる見込みのようだ。
次なる標的はリバプールの若武者、ハーヴェイ・エリオット
アセンシオの完全移籍が困難となる中で、急浮上しているのがリバプールに所属するハーヴェイ・エリオットの存在だ。西『Estadio Deportivo』によれば、ヴィラはエリオットを「多才なプレーメーカー」と位置づけており、攻撃のバリエーションを増やす存在として関心を寄せているという。
リバプールで6年目を迎えるエリオットは、未だレギュラーに定着できておらず、トップチームでの立場に悩みを抱えている。2020-21シーズンにはブラックバーン・ローヴァーズへの期限付き移籍で輝きを放ち、その後アンフィールドに戻ったが、今季は全コンペティションで28試合に出場し、プレー時間はわずか821分に留まった。
それでも5ゴール3アシストという数字は、限られた時間の中での確かな実力を証明するものであり、そのポテンシャルは国内外で高く評価されている。ブライトンをはじめとするプレミア勢、さらには欧州クラブも彼に注目しており、争奪戦が加熱する可能性がある。
アストン・ヴィラにとっては、即戦力のアセンシオとは異なるプロファイルとなるが、22歳という若さと攻撃の柔軟性を備えたエリオットの獲得は、中長期的な補強戦略としては理にかなっている。アセンシオにこだわりすぎず、柔軟な対応を見せることができれば、エリオットという宝石を掘り当てる可能性も否定できない。
ウナイ・エメリの下で新たなサイクルを築こうとするヴィラは、PSGとの交渉に一喜一憂するだけでなく、視野を広げて着実な補強を実現する必要がある。アセンシオの残留交渉が7月に決着を迎えると見られる中、それまでにどれだけプランBを具体化できるかが、クラブの今後を左右するだろう。